この記事の要点
- 経済産業省とIPAの「サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」は、経営層が担う役割の外部委託は不適切とし、CISO補佐やアドバイザを外部から招くことは可能としています
- IPAの2024年度調査(回答4,191社)では、情報セキュリティ対策の専門部署(担当者)がある中小企業は9.3%で、兼務の担当者がいる企業を含めても約3割でした
- 依頼する前に、社内の責任者、頼む役割の型、期間と終わり方、予算の上限と成果の測り方の4つを決めます
- 選ぶときは、役割の範囲、経験と説明の分かりやすさ、成果物、事故のときの動き方、専門家との線引き、中立性、守秘と引き継ぎの7項目を確かめます
- 3か月ほどの試行期間と成果物を決めて始め、四半期ごとに続けるかを見直します
外部CISO・セキュリティ顧問は、社内のCISOと何が違うのか?
社内のCISO(最高情報セキュリティ責任者)は、対策の意思決定と予算の確保に責任を持つ役職です。外部の助言役は、その判断に必要な専門知識を補う立場で、決める責任そのものは負いません。
経済産業省とIPAの「サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」(第2.0版・2022年6月15日公開)は、情報セキュリティに関わる仕事を分野ごとに整理し、外部に委託してよいかどうかの考え方を示しています。CISOの分野については、対策の意思決定やそのための予算・資源の確保を担う役割とし、経営層が担う役割の外部委託は不適切だとしています。一方で、専門家を招いてCISOに任命すること、CISO補佐やアドバイザを外部から招くことは可能としています。
市場では「外部CISO」「バーチャルCISO」「セキュリティ顧問」など呼び方はさまざまですが、手引きに沿って整理すると、外部の専門家が担えるのは「補佐」と「助言」です。社外の人を社内の役職としてCISOに任命する場合も、その人は会社の役職者として責任を負う立場になるため、単なる委託先とは位置づけが変わると考えられます。どちらの形で頼むのかを、契約の前にはっきりさせておく必要があります。
社内に残す役割と外部に頼める役割。内容は本文と同じです。
なぜ今、外部の助言役が選択肢になるのか?
中小企業の多くは、情報セキュリティを専門に担う人を社内に置いていません。社内の担当者を育てながら、足りない専門知識を外から補う形が、国の資料でも示されています。
IPAの「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(報告書は2025年5月、回答4,191社)では、対策の体制について、専門部署(担当者)があるのは9.3%、兼務の担当者が任命されているのは21.0%で、「組織的には行っていない(各自の対応)」が69.7%でした。従業員101名以上の中小企業(295社)に限ると、専門部署があるのは34.6%、兼務の担当者がいるのは51.9%でした。
同じ調査で、情報セキュリティ業務を外部に委託していない企業は70.4%でした。委託している業務(複数回答)は回答企業全体に対していずれも数%台で、比較的多かったのは「情報セキュリティ・BCPのコンサルティング」の6.8%でした。費用対効果が高いと思う委託先を尋ねた設問では、「分からない」が59.1%でした。外に頼むことに関心はあっても、何をどこまで頼めばよいかが分からない会社が多い様子がうかがえます。
IPAが2026年3月に公表した「中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック」は、取り組みの段階ごとに人材の確保策を示しています。はじめの段階では兼務でも1人は担当者を確保し、社内で難しい対策は外部の専門家に相談すること、より強固にする段階では、セキュリティの専門家を招いてCISO等に任命することや、委託仕様を自社で決めたうえで外部のサービスを活用することを挙げています。
依頼する前に、経営者は何を決めるのか?
決めるのは、社内の責任者、頼む役割の型、期間と終わり方、予算の上限と成果の測り方の4つです。ここが決まらないまま相手を探すと、提案の比べようがありません。
- 社内の責任者:外部の助言を受けて最終的に判断する人を決めます。手引きは、兼務であっても事故のときには司令塔の役割に専念できるようにすることを求めています。プレラナは、そのために代わりの人も決めておくことをおすすめしています
- 頼む役割の型:下の表の3つの型のどれを頼むかを決めます。型によって、月に必要な時間も費用も大きく変わります
- 期間と終わり方:社内の担当者が育つまでの期間限定で頼むのか、継続して頼むのかを決めます。終わり方を決めておくと、引き継ぎの準備を最初から始められます
- 予算の上限と成果の測り方:月額の上限と、3か月後・1年後に何ができていれば続けるのか(規程ができた、取引先の質問に答えられた、など)を決めます
| 型 | 頼むこと | 社内に必要なこと |
| 助言型 | 定例の打ち合わせでの相談、判断材料の整理、質問への回答 | 論点を持ち込み、決めて実行する担当者 |
| 補佐型 | 規程・体制・計画の案づくり、点検の進め方の設計、取締役会への説明資料の補佐 | 案を確認して決める責任者と、現場への周知 |
| 実務支援型 | 補佐型に加え、台帳づくりやチェックシートの回答案の作成など手を動かす作業 | 作業の範囲と成果物を確認し、受け取って運用する担当者 |
監視や診断のような専門の作業は、顧問ではなく専門サービスとして委託するのが一般的です。ただし手引きは、その場合も委託仕様を決めることと報告への対応は社内に必要だとしています。何を顧問に頼み、何を専門サービスに出し、何を社内に残すかの切り分け方は、外部委託か内製かの比べ方の記事で扱っています。
選ぶときに確かめる7項目は何か?
役割の範囲、経験と説明の分かりやすさ、成果物、事故のときの動き方、専門家との線引き、中立性、守秘と引き継ぎの7項目です。初回の打ち合わせで同じ質問を各社にすると、比べやすくなります。
- 役割の範囲と、社内に残る判断:助言・補佐・実務支援のどこまでが契約に含まれるか。「すべてお任せください」と言われたときは、何を社内で決める必要があるかを聞き返します
- 経験と説明の分かりやすさ:自社と近い業種・規模での支援の経験があるか。専門用語を、経営者が判断できる言葉に直して説明してくれるか
- 成果物:打ち合わせの記録、規程の案、資産の台帳、取締役会への報告の型など、何が手元に残るか。契約が終わっても使える形で残ることが大切です
- 事故のときの動き方:何時間以内に連絡がつくか、調査や復旧を担う専門の事業者にどうつなぐか。助言役が自ら調査(フォレンジック)まで行うのか、橋渡しまでなのかを確かめます
- 専門家との線引き:個別の法的判断は弁護士、保険の募集は保険代理店、認証の審査は認証機関の役割です。これらを自分で引き受けると言う相手には注意が必要です
- 中立性:特定の製品やサービスを販売しているか、紹介料を受け取るか。受け取ること自体が悪いわけではありませんが、助言と販売の関係を最初に開示してもらうと判断しやすくなります
- 守秘と引き継ぎ:秘密保持契約の範囲、作った資料の権利の扱い、契約終了時の引き継ぎの方法。社内の担当者を育てる計画まで含めて提案があるかも見ます
資格を名乗る相手を確かめる方法もあります。国家資格の情報処理安全確保支援士は登録制で、IPAの「情報処理安全確保支援士検索サービス」では、手続きなしで資格の保有状況を確認できます。IPAは、登録証を示された場合は更新期限内のものであることを確かめるよう案内しています。ただし、資格は確かめる項目の一つで、上の7項目の代わりにはなりません。
契約の前後で、何をすればよいのか?
社内の責任者と困りごとを決めてから候補を探し、短い試行期間で成果を確かめてから続けるかを決めます。最初の一歩は、今困っていることを3つまで書き出すことです。
- 今週:困っていることを3つまで書き出す。「取引先のチェックシートに答えられない」「規程が古い」「事故のときの連絡先が決まっていない」など、具体的に書きます
- 社内の責任者と、頼む役割の型を決める。前の章の4つを1枚にまとめます
- 候補の2〜3者に同じ依頼文を送る。困りごと・型・期間・予算の上限を同じ形で伝えると、提案を比べられます
- 初回の打ち合わせで7項目を聞く。答えを表にして並べます
- 3か月ほどの試行期間と成果物を決めて始める。期間の終わりに、成果物ができたかで続けるかを判断します
- 四半期ごとに見直す。頼む役割の型を変えるか、社内に移す仕事はないかを確かめます
ご相談では、どんな論点が出ているのか?
プレラナが打ち合わせで伺う中でも、求めているのは技術の証明ではなく「説明できる状態」だ、取引先にどこまで開示するかを決めかねている、といった論点がありました。どちらも、外部の助言役に決めてもらうのではなく、判断材料をそろえてもらう領域です。
取引先から定期的にセキュリティの確認を求められている製造業のご相談では、必要なのは技術の証明ではなく、監査の場で見せられる書類一式、つまり規程・情報の区分・記録がそろって「説明できる状態」だ、というお話がありました。外部の助言役に頼むときは、この「手元に残る成果物」を最初に決めておくと、契約の成果を確かめやすくなります。
同じご相談では、業務で生成AIを使っていることを、取引先に自分から伝えるのか、聞かれたら答えるのか、という点がまだ決まっていませんでした。こうした取引先への約束は、経営者が決める事柄です。助言役ができるのは、選択肢とそれぞれの判断材料を並べるところまでだと、プレラナは考えています。
プレラナ自身も、研修の中で扱うことと、全社のルールづくりのような研修の外の支援を分けて考え、研修の枠で約束しすぎないようにしています。社内では、常時動かしている自動処理318本のうち87本が、ほかの処理や操作が決まりどおりに行われているかを見張る監査・点検の仕組みです(2026年8月25日時点の社内の実測)。助言の中身も、自社で実際に回している仕組みの記録をもとにしています。
外部の助言役に何を頼み、何を社内に残すか、依頼文と比較の表づくりからご一緒します。外部の助言役の頼み方を相談する
プレラナがお手伝いできること・しないこと
プレラナは、社内に残す役割と外に頼む役割の整理、依頼文と比較表づくり、規程や台帳などの成果物づくりの補佐をお手伝いします。法的な判断、保険商品の紹介や推奨、認証の審査、事故のときの調査や復旧作業そのものは行いません。
| 企業が解決すべき課題 | プレラナのお手伝い |
| 外部に何を頼めばよいか分からない | 社内に残す役割と外に頼む役割の整理、頼む役割の型の選び方 |
| 候補の提案を比べられない | 困りごと・型・期間・予算をそろえた依頼文と、7項目の比較表づくり |
| 説明できる書類がそろっていない | 規程・情報の区分・記録の型づくりの補佐、取締役会への報告の型の整理 |
| 取引先から確認を求められている | チェックシートの回答案と根拠資料の整理、SCS評価制度★3の要求事項に沿った棚卸し |
プレラナは、AI導入のご支援(AI導入企業50社以上・10業界以上)の中で、業務の手順を書面にし、現場で回る形に定着させることに関わってきました。
プレラナが行わないこと:個別の法的判断(弁護士にご確認ください)、保険商品の紹介や推奨、ISMSやPマークなど認証の審査と合否の見込み、SCS評価制度★3の専門家としての確認、特定の製品やサービスの販売・推奨、事故のときの調査(フォレンジック)や復旧作業そのもの。必要な場合は、専門の事業者へ依頼する事項の整理までをお手伝いします。
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外部の助言役の頼み方、社内の体制の決め方、規程や台帳の整え方、取引先から届いたチェックシートなど、自社の状況に合わせてご相談いただけます。
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よくある質問
- 外部CISOを置けば、社内の責任者は要りませんか?
- 社内の責任者は必要です。経済産業省・IPAの手引きは、経営層が担う役割の外部委託は不適切とし、外部に委託していても自社の要員として対策を推進する人を割り当てる必要があるとしています。外部の助言役は、その人の判断を支える立場と考えます。
- 顧問の打ち合わせは、月にどのくらい必要ですか?
- 決まった基準はありません。プレラナは、規程や体制を作る立ち上げの時期は月2回程度、運用が回り始めたら月1回の定例と必要なときの相談、のように時期で変えることを目安と考えています。頼む役割の型と成果物から、必要な時間を見積もってもらいます。
- 資格を持っている人を選べば安心ですか?
- 資格は知識の目安になりますが、自社の業種や規模での経験、説明の分かりやすさ、事故のときの動き方は資格では分かりません。情報処理安全確保支援士であればIPAの検索サービスで保有状況を確かめたうえで、この記事の7項目もあわせて確かめます。
- お助け隊サービスと顧問は、どう違いますか?
- 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、IPAが定める基準に適合したサービスとして民間の事業者が提供する、相談窓口・監視・駆け付け・簡易な保険をまとめた中小企業向けのサービスです。顧問は、方針や体制づくり、経営者の判断の補佐を継続して頼む契約です。目的が違うため、両方を組み合わせることもあります。
出典(確認日:2026年10月13日)
- 経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver2.0 付録F サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」第2.0版(2022年6月15日公開)p.19(自社実施と外部委託の切り分け)、p.20(図表17 外部委託の考え方)、p.24(外部委託を活用しても自社の要員を割り当てる必要) https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/tebikihontai2.pdf
- 経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドラインと支援ツール」(手引きの公開日の確認) https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/mng_guide.html
- IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書」(2025年5月)p.63〜65(外部委託の状況・費用対効果の高い委託先)、p.68(対策の体制)、p.115〜116(企業規模別の体制) https://www.ipa.go.jp/security/reports/sme/nl10bi000000fbvc-att/sme-chousa-report2024r1.pdf
- IPA「中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック」(2026年3月)p.2(STEP1〜4の全体像)、p.4、p.10 https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0_app_1.pdf
- IPA「登録セキスペを探すなら『検索サービス』」(最終更新2026年9月16日) https://www.ipa.go.jp/jinzai/riss/katsuyou/kensaku.html
- IPA「サイバーセキュリティお助け隊サービス基準」(2.1版・2025年9月8日)p.3 https://www.ipa.go.jp/security/sme/otasuketai/nq6ept000000faii-att/000092713.pdf