株式会社プレラナ
難易度 低〜中印刷現場・製造確認・チェックの負担が大きい

チラシ・パッケージ原稿のAI校正と表記ゆれ・レギュレーションチェック

原稿テキストと社内表記ルール表をAIに渡し、誤字脱字・表記ゆれ・薬機法や景表法に触れる表現を指摘一覧として出させます。

印刷の現場で、チラシ・パッケージ原稿のAI校正と表記ゆれ・レギュレーションチェックに取り組んでいる様子
対象部署
制作部(DTP・校閲)
使う技術
ChatGPT または Claude のテキスト校正プロンプト / 社内表記ルール表をコンテキストとして毎回添付する方式 / Adobe Acrobat のテキスト書き出し(PDF→txt) / Googleスプレッドシートでの指摘一覧管理
必要な入力データ
原稿テキスト(.docx または Acrobat から書き出した .txt) / 社内表記ルール表(xlsx・誤/正の対応表) / 使用を避ける表現のリスト(景品表示法・薬機法の観点) / クライアント指定の固有名詞リスト(商品名・部署名・住所)

Before / After

人がやる場合と、AIを使った場合

効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。

制作担当がInDesignから出力した校正紙をプリントします。校閲担当が赤ペンで誤字脱字と表記ゆれを拾います。表記ルールは印刷した一覧表を横に置き、目で照合します。薬機法や景表法に触れそうな表現は、判断できるベテラン1名に都度確認します。その1名が不在の日は原稿が滞留します。実際に起きているのは、2回目の校正で1回目と違う箇所を指摘してしまう見落としの入れ替わりです。

人がやる場合とAIを使った場合を、軸ごとに並べた表です。
比較する軸人がやる場合AIを使った場合
所要時間(想定)A4チラシ1枚あたり、校閲担当が1回の校正に60〜90分かけます。AI指摘の生成が2〜3分、人の確認が20〜30分です(自社での実測が必要です)。
関わる人数制作担当1名、校閲担当1名に加えて、レギュレーション判断のベテラン1名が関わります。制作担当1名と校閲担当1名の2名です。ベテランが入るのは、判断が割れた箇所だけになります。
起きるミス表記ゆれの見落とし、回ごとに指摘箇所が変わること、ベテラン不在で判断が保留になることが起きます。AIが根拠なく指摘する誤検知は残ります。また、ルール表に載っていない表記は拾えません。
必要なスキル表記ルールを覚えていることと、法規制に関する経験からの判断力が要ります。ルール表をAIに読ませる形式へ整える力と、AI指摘の採否を決める判断力が要ります。

効果の見込み

大日本印刷は2024年12月4日、「DNP AI審査サービス(校正・回覧業務)」に、生成AIで法令や専門用語への準拠を確認する機能を追加し、保険業界向けに提供を開始しました。同社は、この機能により募集文書やパンフレット制作時の審査業務を最大80%削減するとしています(提供元の公表値/2024年12月4日発表)。ただしこれは画像文字認識とルール登録を備えた専用サービスの値で、本事例のようにチャット形式のAIと表計算で組む運用にそのまま当てはまるものではありません。自社での削減幅は、原稿量と表記ルール表の整備度で大きく変わります。導入前後で同種の案件3件を計測して比較してください(要実測)。

Steps

実際にやること

読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。

  1. 01

    社内の表記ルールを1枚の表にまとめる

    くわしく見る

    最初にやるのはAIの導入ではなく、ルールの言語化です。Googleスプレッドシートに「ルールID/分類/判定種別/誤(使わない表記)/正(使う表記)/適用範囲/備考」の7列を作ります。判定種別は「置換」「条件付き可」「使用不可」の3つです。置換の行だけ「正」列に実際に使う表記を入れます。条件付き可と使用不可の行は「正」列を空欄にし、条件を備考に書きます。ここを分けないと、AIが「正」列の文字をそのまま修正案にして、原稿を「使用不可」という文字列へ置き換える指摘を返します。ベテランの頭の中にある判断を、まず20〜30行書き出します。この表がないとAIは何を基準に指摘してよいか分からず、精度が出ません。

  2. 02

    原稿をテキストとして取り出す

    くわしく見る

    InDesignは、テキストフレーム内にカーソルを置いた状態で[ファイル]→[書き出し]を選ぶと「テキストのみ」が選べます。ただし書き出されるのは、そのカーソル位置のストーリー分だけです。全文を一度に取り出すなら、PDFに書き出してからAcrobatの[ファイル]→[書き出し形式]→[テキスト]を使うほうが確実です。取り出したテキストは行番号を付けておくと、後でAIの指摘箇所と突き合わせやすくなります。画像内の文字は取り出せないため、その部分は従来どおり目視で確認します。

  3. 03

    校正プロンプトを作り、指摘を表で受け取る

    くわしく見る

    ChatGPTまたはClaudeに、表記ルール表と原稿テキストを両方貼り付けます。出力形式を必ず指定します。形式を指定しないと文章で返ってきて、確認作業が逆に増えます。ルール表の判定種別ごとに修正案の書き方を変えさせるのが要点です。

    プロンプト例

    あなたは印刷会社の校閲担当です。以下の【表記ルール表】と【原稿】を照合し、指摘を表形式で出してください。
    
    出力列:行番号 / 該当箇所(原文引用)/ 指摘内容 / 修正案 / 根拠ルールID / 確信度(高・中・低)
    
    条件:
    - 判定種別が「置換」の行のみ、修正案に「正」列の値を入れてください
    - 判定種別が「条件付き可」「使用不可」の行は、修正案を空欄にし、条件を指摘内容に書いてください
    - ルール表にない指摘は、根拠ルールIDを「ルール外」と書き、確信度を必ず「中」以下にしてください
    - 日付と曜日の組み合わせ、税込金額の計算は判定しないでください(別途、機械で照合します)
    - 推測で原文を書き換えず、必ず原文をそのまま引用してください
    - 指摘がない場合は「指摘なし」とだけ返してください
    
    【表記ルール表】
    (スプレッドシートをコピーして貼り付け)
    
    【原稿】
    (行番号付きの原稿テキストを貼り付け)
  4. 04

    法規制の観点は別のプロンプトで分けて実行する

    くわしく見る

    誤字脱字と法規制チェックを1回のプロンプトに混ぜると、どちらの精度も落ちます。2回に分けます。法規制側は「断定表現」「最上級表現」「効果効能の表現」の3観点に絞ると、指摘が散らばりません。

    プロンプト例

    以下の原稿から、景品表示法および薬機法の観点で確認が必要な表現を抽出してください。
    
    抽出する観点は次の3つに限定します:
    1. 効果や効能を断定している表現
    2.「日本一」「No.1」など、根拠の提示が必要になる最上級表現
    3. 医薬品的な効能を連想させる表現
    
    出力列:該当箇所(原文引用)/ どの観点か / 懸念の理由 / 代替表現の案を2つ
    
    注意:法的な最終判断はしないでください。「確認が必要な候補」として挙げるだけにしてください。
    
    【原稿】
    (原稿テキストを貼り付け)
  5. 05

    日付・曜日と税表示は、AIに判定させず機械で照合する

    くわしく見る

    曜日の計算は、AIが最も間違えやすい処理です。誤検出と見逃しの両方が起きるため、校正プロンプトの対象から外します。代わりに、原稿から日付表記を抜き出してスプレッドシートのA列に「2026-10-31」の形で入れ、B列に「=TEXT(A2,"aaa")」を入れて曜日を出し、原稿の表記と突き合わせます。税込価格も同じで、C列に税抜価格、D列に「=ROUND(C2*1.1,0)」を入れて原稿の数字と照合します。ここで見つけた指摘は、AIの指摘一覧と同じ表に「機械照合」と分かる形で追記し、採否の記録を1本にまとめます。

  6. 06

    指摘一覧をスプレッドシートに落とし、採否を記録する

    くわしく見る

    AIの出力をスプレッドシートに貼り、右端に「採用/不採用/保留」の列と「判断した人」の列を足します。不採用にした指摘は、理由を1行書きます。この記録が次のステップでルール表を育てる材料になります。

  7. 07

    月に1回、不採用が多い指摘をルール表に反映する

    くわしく見る

    同じ指摘を3回以上不採用にしているなら、それはルール表の書き方が曖昧だという合図です。該当ルールの「備考」列に例外条件を書き足します。逆にAIが拾えなかった誤りがあれば、新しい行として追加します。この更新を続けると、3か月ほどで自社専用の校正基準に育ちます。

Sample Data

この事例で使うサンプルデータ

実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。

一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。

Pitfalls

つまずきやすい点

精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。

ルール表を作らずにいきなりAIに投げると、指摘が的外れになる
「校正して」とだけ頼むと、AIは一般的な日本語の観点で指摘します。社内で許容している表記まで直そうとするため、確認の手間が増えます。精度が出ないと感じたら、まずルール表の行数と具体性を見てください。20行未満なら、ルール不足が原因です。
AIが原文を勝手に書き換えて返してくることがある
「修正後の全文を出して」と頼むと、指摘していない箇所まで滑らかに書き換わることがあります。差分を追えなくなり、逆に危険です。必ず「原文を引用して指摘一覧だけ返す」形式で受け取り、原稿本体の書き換えは人がDTP上で行ってください。
AIが見ていない範囲と、AIに任せてはいけない照合がある
ロゴ内の文字、写真に載せたキャッチコピー、アウトライン化済みの見出しはテキストとして取り出せません。テキスト書き出しの後、元のPDFと照合して「AIが見ていない範囲」を一覧化し、そこは目視で確認してください。もう1つ、日付と曜日の組み合わせはAIが計算を誤ります。「10月31日(水)」のような表記を正しいと返すことも、正しい表記を誤りと返すこともあります。曜日と税込金額は、表計算の関数かカレンダーで照合する工程を別に置いてください。
法規制の最終判断をAIに任せてしまう
AIの指摘は「確認が必要な候補」までです。実際にNGかどうかは、根拠データの有無や商品区分によって変わります。指摘一覧に「判断者」列を必ず設け、誰が決めたかを残してください。事故が起きたときに経緯をたどれる状態にしておくことが重要です。

印刷のAI活用レポートをお送りします

この事例を含む5つの活用事例と、サンプルデータをまとめた資料です。社内での共有にお使いいただけます。