名刺・DMのバリアブル印刷データ整形と自動組版スクリプトの生成
客先ごとにバラバラなExcelの宛名データをAIで整形し、InDesign用の組版スクリプトもAIに書かせて差し込み印刷を組み立てます。

- 対象部署
- 制作部(DTP)
- 使う技術
- Claude Code または ChatGPT による InDesign スクリプト(ExtendScript / UXP)の生成 / Python(pandas)でのデータ整形とバリデーション / InDesign のデータ結合機能とテンプレート設計 / Googleスプレッドシートでの入稿データ受け取り
- 必要な入力データ
- 客先から届く宛名・可変項目のExcel(フォーマットは毎回異なる) / 組版テンプレート(InDesignファイル、可変部分にプレースホルダを設定) / 自社の組版ルール(文字数超過時の処理、禁則、画像の差し替え規則) / 出力仕様(面付け、トンボ、書き出し形式)
Before / After
人がやる場合と、AIを使った場合
効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。
客先から届いたExcelを、ベテランのDTP担当が開きます。列の並びも列名も毎回違うため、まず自社の型に手作業で並べ替えます。氏名の姓と名が1列にまとまっていれば、スペースで分割します。役職が長すぎる人は、フォントサイズを個別に下げます。この調整を500件分、目で見ながら進めます。InDesignのデータ結合を実行し、はみ出した箇所を1件ずつ直します。担当者が1人しかできず、その人が休むと案件が止まります。実際に起きているのは、旧字体の氏名が文字化けしたまま刷ってしまう事故です。
届いたExcelをAIに渡し、自社の標準フォーマットへ変換するPythonスクリプトを書かせます。列名の対応づけ、姓名の分割、文字数超過の検出、旧字体の検出までスクリプトが行います。InDesign側の組版スクリプトもAIに書かせ、はみ出し時の処理を自動化します。人に残るのは、はみ出した箇所をどう処理するかの設計です。フォントを小さくするか、改行するか、役職を略すかは、案件ごとの体裁の話であり、AIには決められません。旧字体をどう扱うかの客先確認も人が行います。
| 比較する軸 | 人がやる場合 | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 所要時間 | (想定)500件のデータ整形と組版の手直しに、ベテラン1名が6〜8時間かけます。 | スクリプトの実行が数分、はみ出し箇所の設計と確認が1〜2時間です(自社での実測が必要です)。 |
| 関わる人数 | できる担当者が1名に限られ、その人が不在だと案件が止まります。 | スクリプトを実行できる担当者が2〜3名に広がります。ただし設計は、引き続き経験者が担います。 |
| 起きるミス | 旧字体の文字化け、姓名分割の誤り、はみ出しの見落としが起きます。 | 列名の対応づけを誤ったまま全件を変換してしまうことがあります。また、スクリプトの例外処理が漏れて一部が欠落することもあります。 |
| 必要なスキル | InDesignの深い操作経験と、Excelを手作業で整形する勘所が要ります。 | AIにスクリプトを書かせる指示力と、変換結果を検証する設計力が要ります。 |
効果の見込み
自動組版による工数削減の公表値は、条件が案件ごとに大きく異なるため、そのまま自社に当てはめられません。要実測です。同じ客先の同種案件で、導入前と導入後の実作業時間を記録してください。あわせて「その作業ができる担当者の人数」を記録すると、属人化の解消度が測れます。時間より、この人数の変化のほうが経営上は重要です。
Steps
実際にやること
読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。
- 01
自社の標準フォーマットを1つ決める
くわしく見る
これが出発点です。客先ごとに違う形を受け入れ続ける限り、属人化は解けません。「姓/名/姓カナ/名カナ/会社名/部署/役職/郵便番号/住所1/住所2/電話/メール」のように列名と順序を固定します。この標準フォーマットを1枚のCSVとして保存し、以降の変換はすべてこの形で書き出します。
- 02
変換スクリプトをAIに書かせる
くわしく見る
届いたExcelの先頭5行をAIに見せ、標準フォーマットへの変換コードを書かせます。重要なのは、変換だけでなく検証も同時に行わせることです。
プロンプト例
Pythonで、客先から届いたExcelを自社の標準フォーマットCSVへ変換するスクリプトを書いてください。プログラミング経験が浅いので、pandas のインストールから説明してください。 【客先Excelの先頭5行】 (実データを貼り付け) 【自社の標準フォーマット(この列名と順序で出力)】 姓 / 名 / 姓カナ / 名カナ / 会社名 / 部署 / 役職 / 郵便番号 / 住所1 / 住所2 / 電話 / メール 変換に加えて、次の検証も行い、別ファイル check.csv に出力してください: 1. 各項目の文字数が上限を超えた行(役職は12文字、部署は20文字を上限とする) 2. 氏名に、次のいずれかを含む行(旧字体・異体字の可能性) (a) 常用漢字表・人名用漢字表の範囲外の文字 (b) 異体字セレクタ(U+FE00-U+FE0F, U+E0100-U+E01EF)を伴う文字 (c) サロゲートペア(BMP外・U+10000以上)の文字 3. 郵便番号が「数字3桁-数字4桁」の形式でない行(ハイフンなし・全角数字・桁不足を含む) 4. 姓と名の分割に失敗した可能性がある行(分割の根拠が空白1つしかない場合など) 条件: - 元データは絶対に上書きしないでください - 郵便番号が数字7桁に正規化できる場合のみ、ハイフン付きへ自動整形し、整形した旨を check.csv に記録してください。それ以外は整形せず、そのまま check.csv に出してください - 判断に迷う行は勝手に補正せず、check.csv に理由付きで出してください - 文字数を数えるときは、サロゲートペアを1文字として数えてください - コードには日本語コメントを1行ずつ入れてください
- 03
検証結果を先に見て、データを確定させる
くわしく見る
組版に進む前に check.csv を必ず見ます。文字数超過、旧字体、郵便番号の不正がここに出ています。旧字体は客先へ確認します。「常用漢字に置き換えてよいか」「外字を作るか」は自社では決められません。この確認を飛ばすと、刷った後に判明します。
- 04
InDesign側の組版スクリプトをAIに書かせる
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データ結合機能だけでは、はみ出しの自動処理ができません。スクリプトで補います。処理の優先順位を先に決めてからAIに伝えるのがコツです。先にテンプレート側の準備をします。InDesignのテキストフレームに「名前」という属性はありません。スクリプトから個々のフレームを特定する手段はスクリプトラベルです。テンプレート.inddで対象のテキストフレームを選択し、[ウィンドウ]→[ユーティリティ]→[スクリプトラベル]を開いて、役職なら yakushoku、部署なら busho、氏名なら namae と入力します。3つのフレームすべてに設定してから次に進みます。
プロンプト例
Adobe InDesign の ExtendScript を書いてください。名刺のバリアブル組版で、以下の処理を自動化したいです。 前提: - テンプレート.indd の各テキストフレームに、スクリプトラベル(ウィンドウ > ユーティリティ > スクリプトラベル)で yakushoku / busho / namae を設定してある - data.csv を1行ずつ読み込み、1レコード=1ページとして流し込む はみ出し時の処理(この優先順位で試す): 1. フレーム内に収まるなら何もしない 2. 収まらない場合、文字トラッキングを -20 まで詰める 3. それでも収まらない場合、フォントサイズを 0.5pt ずつ、最小 6pt まで下げる 4. 6pt でも収まらない場合は、そのレコードのページ番号と項目名を overflow_log.txt に書き出し、処理は続行する 条件: - 自動で改行や省略はしないでください(人が判断するため) - 処理が終わったら、処理件数と overflow の件数をアラートで表示してください - コードには日本語コメントを入れてください
- 05
最初は10件で試し、印字位置を実測する
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500件をいきなり流さないでください。まず10件だけで書き出し、実際に印刷して定規で位置を測ります。データ結合はテンプレート側のマージン設定に影響されるため、画面上の見た目と実出力がずれることがあります。この10件の検証を飛ばすと、全件刷った後に版ずれが判明します。
- 06
overflow_log を確認し、処理方針を決める
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はみ出しが残ったレコードを1件ずつ見ます。役職が長い人は、客先に略称の許可をもらうか、2行に組むかを決めます。ここが人の仕事です。決めた方針は「はみ出し処理ルール.txt」として案件フォルダに残し、次回同じ客先の案件で参照します。この蓄積が、属人化を解く実体になります。
- 07
変換と組版の手順書を作り、他の担当者に渡す
くわしく見る
スクリプトができただけでは属人化は解けません。「どのファイルをどこに置き、どの順でどのコマンドを実行するか」を10行程度の手順書にします。手順書とスクリプトを案件フォルダに一緒に置き、別の担当者に実際にやってもらいます。詰まった箇所が手順書の不足箇所です。そこを書き足せば完成です。
Sample Data
この事例で使うサンプルデータ
実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。
一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。
Pitfalls
つまずきやすい点
精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。
AIが書いたスクリプトを検証せずに全件流す
旧字体・外字が文字化けしたまま処理が進む
はみ出しをスクリプトが自動で省略してしまう
スクリプトができただけで属人化が解けたと考える
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