株式会社プレラナ
難易度 士業(社労士・税理士)総務・人事転記作業が多い

助成金の要件チェックと申請書類のドラフト

賃金台帳と対象者の情報をAIに突き合わせさせ、支給要件の充足状況を判定表として出させたうえで、申請様式に転記する項目を整えます。

士業(社労士・税理士)の現場で、助成金の要件チェックと申請書類のドラフトに取り組んでいる様子
対象部署
助成金申請担当
使う技術
ChatGPT または Claude(要件の判定表の生成と申請項目の整理) / Python(賃金台帳CSVからの賃金上昇率の算出) / 厚生労働省の支給要領と申請様式の原本確認(人が実施) / 雇用関係助成金ポータルまたは労働局窓口での申請(人が実施)
必要な入力データ
対象者の一覧(社員番号/雇用形態/転換日/雇入れ日) / 賃金台帳の抜粋(転換前6か月分・転換後6か月分) / 就業規則および賃金規程の該当条文 / 厚生労働省が公表する当該年度の支給要領(人が原本を確認)

Before / After

人がやる場合と、AIを使った場合

効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。

顧問先から「正社員に登用したので助成金を申請したい」と連絡が入ります。担当者は、まず当該年度の支給要領を開き、要件を読み直します。要領は年度ごとに変わるため、前年の記憶で進めると差し戻されます。次に賃金台帳をもらい、転換前6か月と転換後6か月の賃金を電卓で計算し、上昇率を確認します。対象者が5名いれば、同じ計算を5回します。就業規則に転換制度の定めがあるかも確認します。要件を満たすと判断したら、申請様式に氏名、転換日、賃金額を1件ずつ転記します。転記の途中で、賃金台帳の項目と様式の項目の対応で迷い、手が止まります。1件あたり2〜3時間、5名分で丸1日以上かかります。

人がやる場合とAIを使った場合を、軸ごとに並べた表です。
比較する軸人がやる場合AIを使った場合
所要時間対象者5名で、要件確認と賃金の計算と転記に丸1日以上かかります。判定表の生成と賃金計算に10分、人による要領の原本確認と様式への記入に2〜4時間かかります(自社での実測が必要です)。
関わる人数助成金担当1名と、有資格者の確認1名です。賃金台帳の見方をめぐって、給与計算担当への問い合わせが発生します。助成金担当1名と、有資格者の確認1名です。賃金の算出根拠が表に出るため、問い合わせは要りません。
起きるミス前年度の要件で判断する、賃金上昇率の計算を取り違える、様式への転記を写し間違えるといった誤りが起きます。AIが古い年度の要件で判定することがあります。また、賃金台帳の項目の解釈がずれることもあります。
必要なスキル支給要領を読み解く力、賃金台帳の項目の理解、様式の記入経験が要ります。判定結果を当該年度の要領と照合する力と、賃金台帳の項目とCSVの列の対応を定義する力が要ります。

効果の見込み

この工程は、対象者の人数と賃金台帳の受け取り形式によって作業量が大きく変わります。台帳をPDFや紙で受け取っている場合は、CSV化の工程が新たに発生するため、初回は従来より時間がかかります。導入前に、直近の申請案件について「要件確認」「賃金の計算」「様式への記入」の3つに分けて時間を記録してください。同じ助成金・同じ人数規模の案件で比較する方法をおすすめします(要実測)。

Steps

実際にやること

読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。

  1. 01

    当該年度の支給要領を人が入手し、要件を項目に分解する

    くわしく見る

    最初にやるのはAIへの質問ではなく、原本の入手です。助成金の支給要件は年度ごとに変わります。厚生労働省のページから当該年度の支給要領と申請様式をダウンロードし、要件を項目に分解して一覧にします。列は「要件ID/要件の内容/判定に必要なデータ/要領の該当箇所」の4列です。この一覧が判定表の骨格になります。AIに要件そのものを答えさせる使い方は避けてください。

  2. 02

    賃金台帳を、判定に使える形のCSVに整える

    くわしく見る

    賃金台帳はPDFや紙で受け取ることがあります。判定に使うには、社員番号、対象月、支給項目ごとの金額が列に並んだCSVが必要です。どの手当を賃金の算定に含めるかは、助成金の要件によって異なります。含める項目と含めない項目を先に決め、列の定義として書き出してください。この定義が曖昧なままだと、上昇率の計算結果が人によって変わります。

  3. 03

    賃金の上昇率をPythonで計算し、根拠を残す

    くわしく見る

    電卓での計算は、後から根拠をたどれません。計算処理をAIに書かせ、対象者ごとの転換前後の平均賃金と上昇率を出力させます。四捨五入の桁数も指定します。

    プロンプト例

    Pythonで賃金の上昇率を算出する処理を書いてください。
    
    入力CSVの列は次のとおりです。
    社員番号, 氏名, 対象年月, 区分(転換前・転換後), 基本給, 職務手当, 精皆勤手当, 通勤手当, 時間外手当
    
    処理内容:
    1. 社員番号ごとに、区分が「転換前」の6か月分と「転換後」の6か月分に分けます
    2. 各月の算定対象賃金を「基本給 + 職務手当 + 精皆勤手当」とします(通勤手当と時間外手当は含めません)
    3. 転換前6か月の平均と、転換後6か月の平均を求めます
    4. 上昇率を(転換後平均 - 転換前平均)÷ 転換前平均 × 100 で計算し、小数第2位まで表示します
    
    出力CSVの列:社員番号, 氏名, 転換前平均賃金, 転換後平均賃金, 上昇額, 上昇率(パーセント), 対象月数(転換前), 対象月数(転換後)
    
    条件:
    - 社員番号は文字列として読み込んでください
    - 対象月数が6か月に満たない社員番号は、上昇率を空欄にし、備考列に「対象月数不足」と出力してください
    - 金額列のカンマを除去してから数値に変換してください
    - コードには日本語のコメントを書いてください
  4. 04

    要件ごとの判定表をAIに作らせる

    くわしく見る

    ステップ1で作った要件の一覧と、ステップ3の計算結果、就業規則の該当条文をAIに渡します。要件そのものをAIに思い出させるのではなく、こちらが渡した要件に対して判定させる形にします。

    プロンプト例

    以下の【要件一覧】【対象者データ】【賃金上昇率の算出結果】【就業規則の該当条文】をもとに、対象者ごとの要件充足の判定表を作ってください。
    
    出力形式:表(列は次の6つ)
    対象者(社員番号・氏名)/ 要件ID / 要件の内容 / 判定(充足・不充足・要確認)/ 根拠となる数値または条文 / 不充足の場合に必要な対応
    
    条件:
    - 判定は、私が渡した【要件一覧】に書かれた内容のみを基準にしてください。あなたの知識で要件を補わないでください
    - 判定に必要なデータが渡されていない要件は「要確認」とし、何のデータが必要かを書いてください
    - 根拠となる数値は、渡したデータから引用し、計算し直さないでください
    - 対象者ごとに、充足・不充足・要確認の件数を末尾に集計してください
    
    【要件一覧】
    (要領から分解した4列の一覧を貼り付け)
    
    【対象者データ】
    (社員番号・氏名・雇入れ日・転換日・雇用形態の一覧を貼り付け)
    
    【賃金上昇率の算出結果】
    (ステップ3の出力CSVを貼り付け)
    
    【就業規則の該当条文】
    (転換制度に関する条文を貼り付け)
  5. 05

    判定結果を、当該年度の要領の原本と照合する

    くわしく見る

    判定表の各行について、要領の該当ページを開いて確認します。特に、支給額の区分、対象となる労働者の範囲、賃金の算定に含める手当の扱いは、年度によって変わることがあります。確認した要領の版と、確認日、確認者を判定表の欄外に記録します。この記録は、後から差し戻しがあったときに経緯をたどる材料になります。

  6. 06

    申請様式への記入項目を整理し、人が様式に記入する

    くわしく見る

    AIには、様式の各欄に何を書くかの対応表までを作らせます。様式そのものへの記入は人が行います。様式は年度ごとに更新され、電子申請の入力画面とも項目が異なるためです。対応表の列は「様式の欄名/記入する内容/出典(どのデータから取るか)/記入者の確認」の4列にします。記入後、提出前に有資格者が全欄を確認します。

  7. 07

    不充足だった対象者の対応を、顧問先に説明する資料にまとめる

    くわしく見る

    判定表の「不充足の場合に必要な対応」列を抜き出し、顧問先向けの1枚にまとめます。要件を満たさない理由と、次の申請時期までに何をすればよいかを書きます。この説明が早いほど、顧問先は次の機会に間に合わせられます。判定表をそのまま渡すと、専門用語が多く伝わりません。要件IDを外し、平易な言葉に置き換える工程を人が行います。

Sample Data

この事例で使うサンプルデータ

実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。

  • CSV

    260710_アオイ物流_正社員転換対象者一覧.csv

    判定の入力その1。有期雇用から正社員へ転換した対象者の基本情報です。

    このファイルをダウンロード

  • CSV

    260710_アオイ物流_賃金台帳抜粋_転換前後.csv

    判定の入力その2。対象者5名の転換前6か月と転換後6か月の賃金です。対象者一覧と社員番号・氏名が完全に一致します。

    このファイルをダウンロード

  • Excel

    要件判定表_アオイ物流_260710.xlsx

    AIに出力させる判定表の見本。上記2ファイルの対象者と数値に一致します。

    このファイルをダウンロード

一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。

Pitfalls

つまずきやすい点

精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。

AIが前年度の支給要件で判定してしまう
助成金の要件は年度ごとに見直されます。AIは学習時点の内容で答えるため、支給額の区分や対象者の範囲が古いことがあります。要件そのものをAIに答えさせず、こちらが要領から分解した一覧を渡して判定だけさせてください。プロンプトに「渡した要件一覧のみを基準にし、知識で補わない」と明記します。それでも判定結果は原本と照合してください。
賃金の算定に含める手当の定義が曖昧なまま計算する
通勤手当や時間外手当を算定に含めるかどうかで、上昇率は変わります。担当者ごとに解釈が違うと、同じ台帳から違う結果が出ます。含める項目と含めない項目を、CSVの列の定義として文書化してください。定義は要領の記載を根拠として書き、根拠のページ番号も残します。この文書を、計算処理を作るときのプロンプトにそのまま貼ります。
対象月数が足りない対象者を、そのまま申請に含めてしまう
転換後6か月分の賃金がそろう前に申請すると、差し戻されます。対象月数を自動で数え、足りない場合は上昇率を空欄にする処理にしてください。判定表では「要確認」として区別し、いつ再判定するかを記載します。5名まとめて申請しようとして全体が遅れるより、そろった対象者から先に進めるほうが顧問先の負担が軽くなります。
申請様式への記入までAIに任せようとする
様式は年度ごとに更新され、電子申請の入力画面とも項目名が異なります。AIに様式を再現させると、古い様式や存在しない欄が生成されます。AIには「様式の欄名と記入内容の対応表」までを作らせ、様式そのものは所管の公表ページからダウンロードした最新版を使ってください。記入は人が行い、提出前に全欄を有資格者が確認します。

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次は「就業規則の改定ドラフトと新旧対照表の作成」を読んでください。助成金の要件には、転換制度が就業規則に定められていることを求めるものがあります。要件を満たしていない場合、規程の改定が先の作業になります。改定と申請を1つの流れとして設計すると、顧問先への説明が1回で済みます。

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