就業規則の改定ドラフトと新旧対照表の作成
現行の就業規則と改定方針をAIに渡し、条文の改定案と、条番号がそろった新旧対照表を同時に作らせます。

- 対象部署
- 労務コンサルティング担当
- 使う技術
- ChatGPT または Claude(条文の改定案と対照表の同時生成) / Microsoft Word の変更履歴機能(人による最終編集) / Googleスプレッドシートでの新旧対照表の管理 / 厚生労働省のモデル就業規則との照合(人が実施)
- 必要な入力データ
- 現行の就業規則(docx またはテキスト化した全文) / 改定方針のメモ(どの制度をどう変えるかの箇条書き) / 事務所の雛形条文(該当章のみ抜粋) / 顧問先の運用実態のヒアリングメモ(実際にどう運用しているか)
Before / After
人がやる場合と、AIを使った場合
効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。
担当者が現行の就業規則のWordファイルを開きます。事務所の雛形ファイルを別ウィンドウで開き、見比べます。改定が必要な条文を1つずつ書き換えます。条を追加すると、以降の条番号がすべてずれます。参照している箇所(第○条に定めるところにより等)を検索して直します。次に、顧問先へ説明するための新旧対照表を、Excelに手で作ります。左に旧条文、右に新条文を貼り付ける作業です。条文が20か所を超えると、貼り付けの取り違えが起きます。届出直前に本体と対照表の食い違いに気づき、作り直すことがあります。1社あたり、丸1日から2日かかります。
現行規程の全文と改定方針をAIに渡し、改定案と新旧対照表を同時に出させます。同時に作らせることが要点です。別々に作ると、両者が食い違うためです。出力は表形式で受け取り、列に「条番号/旧条文/新条文/改定理由/改定の種類(新設・改正・削除)」を並べます。条番号のずれについても、AIに影響箇所を列挙させます。人に残るのは、顧問先の運用実態に合っているかの判断です。規程どおりに運用できない条文を入れると、後で不利に働きます。ヒアリングで聞いた実態と照らし、条文を落とすか、経過措置を入れるかを決めるのは人の仕事です。届出の要否と、意見聴取の進め方も人が決めます。
| 比較する軸 | 人がやる場合 | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 1社あたり、条文の改定と対照表の作成に1〜2日かかります。 | 改定案と対照表の生成に5〜10分、人による実態照合と修正に2〜4時間かかります(自社での実測が必要です)。 |
| 関わる人数 | 担当者1名と、有資格者1名の確認です。条番号のずれの確認で、別の担当者に見てもらう場合もあります。 | 担当者1名と、有資格者1名の確認です。条番号のずれはAIが影響箇所を列挙するため、追加の目視は要りません。 |
| 起きるミス | 条番号のずれ、対照表と本体の食い違い、参照条文の直し漏れが起きます。 | AIが現行条文を要約して書き換えてしまうことがあります。また、実態と合わない条文が入ることもあります。 |
| 必要なスキル | 雛形と現行規程を突き合わせる根気と、Wordの条番号の扱いに慣れていることが要ります。 | 顧問先の運用実態と条文が合うかを判断する力と、原文の引用が保たれているかを確認する目が要ります。 |
効果の見込み
士業向けのビジネススクールが公開する記事では、生成AIの活用により就業規則の作成時間が従来の3分の1になったとする例が紹介されています(媒体報告値)。ただし、対象が新規作成か改定か、条数がいくつかで作業量は大きく変わります。自社では、直近に対応した改定案件2件について「条文の作成」と「対照表の作成」の時間を分けて記録し、同じ規模の案件で比較してください(要実測)。
Steps
実際にやること
読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。
- 01
現行の就業規則を条ごとに区切ったテキストにする
くわしく見る
WordファイルをそのままAIに貼ると、章立てが崩れて条番号を取り違えます。まず「第○条(見出し)」で始まる行を1条1ブロックに整えます。テキストエディタで改行を整理するだけで足ります。この下ごしらえに20分かけると、後の精度が変わります。附則と別表は本体と分けて扱ってください。
- 02
改定方針を箇条書きにする
くわしく見る
「育児・介護の制度の見直し」といった粒度では、AIは一般的な雛形を書いてきます。「第○条に○○を追加する」「第○条の○日を○日に変更する」の粒度まで下ろします。方針が決まっていない項目は、この段階で顧問先に確認します。方針の曖昧さは、そのまま条文の曖昧さになります。
- 03
改定案と新旧対照表を1回の指示で同時に出させる
くわしく見る
改定案だけを先に作ると、対照表を別に作るときに転記のずれが起きます。1回の出力で両方を含む表として受け取ります。
プロンプト例
あなたは社会保険労務士事務所の就業規則の担当者です。以下の【現行規程】と【改定方針】をもとに、新旧対照表を作ってください。 出力形式:表(列は次の5つ) 条番号 / 旧条文(原文をそのまま引用)/ 新条文 / 改定理由 / 改定の種類(新設・改正・削除) 条件: - 旧条文は要約せず、原文をそのまま引用してください。省略記号は使わないでください - 改定方針に書かれていない条文は、対照表に含めないでください - 条を新設した場合は、以降の条番号がずれます。ずれる条番号の一覧を表の後に別途書いてください - 他の条を参照している記述(「第○条に定める」等)で、番号の修正が必要な箇所も別途列挙してください - 新条文の文体は現行規程の文体に合わせてください 【現行規程】 (条ごとに区切ったテキストを貼り付け) 【改定方針】 (箇条書きの方針を貼り付け)
- 04
旧条文が原文どおりかを機械的に照合する
くわしく見る
AIは旧条文を要約したり、言い回しを整えたりすることがあります。対照表の旧条文の列を、現行規程のテキストと文字単位で照合してください。Wordの比較機能でも、テキスト差分ツールでも構いません。1文字でも違えば、その行は差し戻してもう一度出力させます。ここを飛ばすと、顧問先への説明資料に誤った現行条文が載ります。
- 05
顧問先の運用実態と照らし、入れる条文を決める
くわしく見る
ヒアリングメモを開き、条文ごとに「実際にこの運用ができるか」を確認します。届出書類の提出期限、承認者、記録の保管方法が、実際の人員で回るかを見ます。回らない条文は、期限を緩めるか、経過措置を付けます。この判断は事務所の担当者が行い、判断の理由を対照表の「改定理由」列に追記します。後任者が経緯をたどれるようにするためです。
- 06
Wordの変更履歴で本体を編集し、対照表と最終照合する
くわしく見る
確定した新条文を、現行のWordファイルに変更履歴を付けて反映します。上書き保存ではなく、履歴を残す形にします。反映後、対照表の新条文と本体の条文をもう一度突き合わせます。条番号のずれの一覧と、参照箇所の修正一覧も、この段階で消し込みます。届出の要否と意見聴取の段取りは、有資格者が決めます。
Sample Data
この事例で使うサンプルデータ
実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。
一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。
Pitfalls
つまずきやすい点
精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。
AIが旧条文を要約したり、言い回しを整えて引用してしまう
条を新設すると以降の条番号がずれ、参照している記述が食い違う
運用できない条文を入れてしまい、後で不利に働く
法改正への対応を、AIの知識だけで済ませてしまう
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