株式会社プレラナ
難易度 低〜中士業(社労士・税理士)顧客対応属人化している

顧問先からの労務相談への回答ドラフト作成

相談メールの本文と、事務所に蓄積した過去回答の一覧をAIに渡し、論点整理と回答ドラフトと確認すべき事実を3点セットで出させます。

士業(社労士・税理士)の現場で、顧問先からの労務相談への回答ドラフト作成に取り組んでいる様子
対象部署
労務相談担当(補助者・有資格者)
使う技術
ChatGPT または Claude(相談文の論点抽出と回答ドラフト生成) / Googleスプレッドシートで管理する過去回答ナレッジ表 / e-Gov法令検索での条文の原文確認(人が実施) / Gmail の下書き機能(送信は必ず人が実行)
必要な入力データ
顧問先からの相談メール本文(個人名・社名を伏せたテキスト) / 過去回答ナレッジ表(csv・論点/回答要旨/根拠条文/回答日) / その顧問先の就業規則の該当条文(抜粋テキスト) / 事務所として決めている回答方針のメモ(断定する範囲・留保を付ける範囲)

Before / After

人がやる場合と、AIを使った場合

効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。

顧問先の総務担当者から、メールで相談が届きます。補助者が本文を読み、論点を推測します。過去に似た相談がなかったかを、自分の受信箱とフォルダから検索します。見つからなければ、条文と通達を一から調べます。調べた内容をWordに書き、有資格者へ確認を依頼します。有資格者は訪問の合間に確認し、赤字を入れて返します。補助者が反映し、メールを作り直します。1件あたり、調べ物に60〜90分、往復の待ち時間に半日から1日かかります。急ぎでない相談ほど後回しになり、返信までに3日以上かかることがあります。

人がやる場合とAIを使った場合を、軸ごとに並べた表です。
比較する軸人がやる場合AIを使った場合
所要時間1件あたり、補助者の調べ物と起案に60〜90分かかります。有資格者の確認待ちを含めると、返信まで半日から1日です。論点整理と回答ドラフトの生成に3〜5分、人による条文確認と修正に20〜40分かかります(自社での実測が必要です)。
関わる人数補助者1名+有資格者1名です。過去の類似案件を知る別の担当者への聞き込みが発生する場合もあります。補助者1名+有資格者1名です。過去回答ナレッジ表を参照するため、聞き込みは要りません。
起きるミス前提条件を確認しないまま回答する、3か月前と違う回答をする、条文の改正前の内容で答えるといった誤りが起きます。AIが存在しない条番号や古い改正内容を挙げることがあります。また、ナレッジ表に載っていない論点では精度が落ちます。
必要なスキル条文と通達を検索する力と、過去案件を記憶していることが要ります。AIが挙げた根拠を原文で確認する力と、断定と留保を線引きする判断力が要ります。

効果の見込み

この工程の削減幅は、過去回答ナレッジ表の行数と、相談の論点の広がりで大きく変わります。ナレッジが40行に満たない段階では、一般論に近いドラフトしか返らないため、確認の手間が先に増えます。導入前に、直近の相談10件について「調べ物の時間」と「有資格者の確認待ち時間」を分けて記録してください。同じ10件を導入後に計測して比較する方法をおすすめします(要実測)。

Steps

実際にやること

読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。

  1. 01

    過去の回答をナレッジ表に書き出す

    くわしく見る

    最初の作業はAIではありません。直近1年に回答した相談を、スプレッドシートに40〜60行書き出します。列は「相談ID/顧問先の業種/論点/相談の要旨/回答の要旨/根拠条文/留保を付けた点/回答日/担当者」の9列です。社名と個人名は入れません。ここが空のままAIに投げると、事務所の方針が反映されない一般論しか返ってきません。

  2. 02

    相談メールから社名と個人名を外す

    くわしく見る

    AIに渡す前に、社名を「A社」、従業員名を「従業員X」に置き換えます。事務所によっては、顧問先ごとの秘密保持契約で外部サービスへの入力が制限されています。まず契約書の該当条項を確認してください。置き換え作業は手作業でも構いませんが、頻度が高いなら置換用のスプレッドシート関数を用意すると漏れが減ります。

  3. 03

    論点整理と不足情報の洗い出しを先に実行する

    くわしく見る

    回答ドラフトをいきなり作らせません。先に論点と、確認すべき事実を出させます。この順にすると、前提を取り違えたままの回答が減ります。

    プロンプト例

    あなたは社会保険労務士事務所の補助者です。以下の相談文を読み、2つを出してください。回答文はまだ書かないでください。
    
    出力1:論点の一覧(箇条書き・最大5件)。それぞれ「何が問われているか」を1行で書いてください。
    
    出力2:回答前に顧問先へ確認すべき事実の一覧(表形式)。列は「確認事項 / なぜ必要か / 確認しないまま回答した場合のリスク」の3列。
    
    条件:
    - 相談文に書かれていない事実を、書かれているものとして扱わないでください
    - 就業規則や労使協定の定めが関係する場合は、必ず確認事項として挙げてください
    
    【相談文】
    (社名と個人名を置き換えた相談メール本文を貼り付け)
  4. 04

    確認事項を顧問先に聞いてから、回答ドラフトを作る

    くわしく見る

    不足していた事実が埋まった段階で、ドラフトを作らせます。根拠条文は必ず条番号まで出させ、後で原文と照合できる形にします。断定を避けたい箇所は、プロンプトで明示的に指示します。

    プロンプト例

    以下の【相談文】【確認済みの事実】【過去回答ナレッジ】をふまえ、顧問先へ送る回答文のドラフトを作ってください。
    
    出力形式:
    1. 結論(3行以内)
    2. 理由(根拠となる法令名と条番号を必ず明記)
    3. 実務上の進め方(手順を番号付きで)
    4. 留保が必要な点(断定できない理由とあわせて)
    
    条件:
    - 根拠条文は「法令名+条番号」の形で書き、内容の要約も1行添えてください
    - 過去回答ナレッジに同じ論点があれば、その回答と矛盾しないようにし、参照した相談IDを末尾に書いてください
    - 制度の適用可否が事実関係で変わる場合は、断定せず「〜の場合は〜となります」の形で書いてください
    - 文体は「です・ます」、1文は60字以内にしてください
    
    【相談文】
    (貼り付け)
    
    【確認済みの事実】
    (顧問先から回答を得た内容を貼り付け)
    
    【過去回答ナレッジ】
    (スプレッドシートの該当行をコピーして貼り付け)
  5. 05

    根拠条文をe-Gov法令検索で原文照合する

    くわしく見る

    この工程は省略できません。AIは条番号を間違えることがあり、改正前の内容を書くこともあります。e-Gov法令検索で法令名を開き、条番号と本文を目で確認します。合っていれば回答ドラフトのその行にチェックを入れます。合っていなければ、条番号を直したうえで、周辺の記述に影響がないかを見ます。確認した人の名前を、ドラフトの末尾に記録します。

  6. 06

    有資格者が断定と留保を線引きし、Gmailの下書きに落とす

    くわしく見る

    有資格者は、結論を断定してよいか、留保を付けるかを決めます。判断が分かれた箇所は、なぜそう決めたかを1行残します。確定した本文はGmailの下書きとして保存します。送信は必ず人が最終確認したうえで行います。AIの出力から直接送信する経路は作りません。

  7. 07

    回答した内容をナレッジ表に1行追加する

    くわしく見る

    送信した回答を、ステップ1の表に追記します。この追記を続けることで、AIに渡すナレッジが育ちます。半年ほど続けると、同種の相談で最初のドラフトの精度が目に見えて上がります。追記を忘れると、ナレッジが古いままになり、AIが事務所の方針とずれた回答を返すようになります。月末にまとめて追記するより、送信直後に追記する運用のほうが続きます。

Sample Data

この事例で使うサンプルデータ

実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。

  • テキスト

    260710_労務相談_受信メール_匿名化済.txt

    AIに渡す相談メールの見本。社名と個人名を置き換え済みで、前提条件が意図的に不足しています。

    このファイルをダウンロード

  • CSV

    過去回答ナレッジ表_労務相談.csv

    AIに毎回添付する事務所の回答蓄積。相談の論点と回答方針を1行1件で管理します。

    このファイルをダウンロード

  • CSV

    AI出力_確認事項リスト_サンプル.csv

    ステップ3でAIに出させる「確認すべき事実」の見本。この形で受け取ると、顧問先への聞き取りがそのまま作れます。

    このファイルをダウンロード

一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。

Pitfalls

つまずきやすい点

精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。

AIが実在しない条番号や、改正前の内容を挙げることがある
根拠条文らしい形で出力されるため、正しく見えます。しかし条番号が1つずれていたり、改正で削られた規定を書いていたりします。回答ドラフトを作る工程と、条文を確認する工程は必ず分けてください。e-Gov法令検索で原文を開き、確認した人の名前をドラフトに残す運用にします。この記録が、後で問い合わせを受けたときの説明材料になります。
前提を確認しないまま回答ドラフトを作らせると、もっともらしい誤答が出る
相談文には、三六協定の有無や就業規則の定めが書かれていないことがほとんどです。AIは不足した前提を都合よく補って回答します。論点整理と確認事項の洗い出しを先に実行し、顧問先へ聞いてからドラフトを作る順序を崩さないでください。順序を守るだけで、誤答の多くは防げます。
顧問先の実名や従業員の氏名を、そのまま外部サービスに入力してしまう
相談メールをコピーして貼り付けると、社名と担当者名が一緒に入ります。まず顧問契約と秘密保持契約の条項を確認してください。あわせて、利用するサービスで入力内容が学習に使われない設定になっているかを確認します。そのうえで、社名と個人名の置き換えを手順書に明記し、貼り付け前の作業として固定してください。
ナレッジ表への追記が止まり、AIの回答が事務所の方針からずれていく
導入直後は追記しますが、繁忙期に止まります。半年後には、AIが古い方針で回答するようになります。追記の作業は送信直後に行い、1件あたり2分で終わる粒度にしてください。要旨は各2行までとし、詳細はメールの検索で追える形にします。月次で追記件数を数え、回答件数と大きく開いていれば運用を見直します。

Related

士業(社労士・税理士)の他の事例

次は「顧問先ヒアリングの文字起こしから議事録とタスクを作る」を読んでください。相談は面談の場でも発生します。面談で受けた相談を議事録から拾い、この事例のナレッジ表へ流し込むと、メール以外の相談も蓄積されます。

士業(社労士・税理士)のページに戻る

士業(社労士・税理士)のAI活用レポートをお送りします

この事例を含む5つの活用事例と、サンプルデータをまとめた資料です。社内での共有にお使いいただけます。