株式会社プレラナ
難易度 低〜中介護・福祉総務・人事属人化している

外国人スタッフ向けの、やさしい日本語マニュアルと多言語連絡の支援

既存の日本語マニュアルを、やさしい日本語とふりがな付きに書き換え、母語の訳を併記した手順書を作ります。訳語が現場で通じるかの確認と、介助の安全に関わる手順の最終判断は職員が行います。

介護・福祉の現場で、外国人スタッフ向けの、やさしい日本語マニュアルと多言語連絡の支援に取り組んでいる様子
対象部署
教育担当・ユニットリーダー
使う技術
ChatGPT または Claude によるやさしい日本語への書き換えとふりがな付与 / 翻訳サービス(DeepL など)による母語訳の作成と、AIによる訳語の妥当性確認 / Googleスプレッドシートによる用語対訳表の管理(確認済みかどうかの状態を保持) / Googleドキュメントによるマニュアルの版管理 / スマートフォンで読める形式での配布(PDF化して共有)
必要な入力データ
既存の日本語マニュアル(.docx・移乗、食事介助、排泄介助などの手順書) / 用語対訳表(.csv・日本語、やさしい日本語、母語訳、確認状態) / 在籍スタッフの母語と日本語の習熟度の一覧 / 現場でよく使う施設内の言い回しの一覧(略語、呼び方) / 介助手順のうち、安全に直結する箇所を印付けした一覧

Before / After

人がやる場合と、AIを使った場合

効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。

日本語で書かれた手順書を渡しますが、漢字が多く読み切れません。結局は先輩職員が横について、身振りを交えて手順を説明します。説明する人によって言い方が変わり、「腰を落として」と言う人と「膝を曲げて」と言う人がいます。教わる側は、どちらが正しいのか分からないまま両方を覚えようとします。日々の連絡事項も口頭で伝わるため、聞き取れなかった部分は本人が推測します。分からないことを聞き返すのに気を使い、確認しないまま作業に入ることもあります。教える側の時間も、教わる側の理解も、繰り返しの中で積み上がりません。技能実習や特定技能の在留資格では日本語能力に一定の要件がありますが、実務で使う専門用語や施設内の言い回しは、その要件の範囲外です。

人がやる場合とAIを使った場合を、軸ごとに並べた表です。
比較する軸人がやる場合AIを使った場合
所要時間1つの介助手順を教えるのに、先輩職員が付きっきりで30〜60分かかります。しかも同じ説明を、人が変わるたびに繰り返しています。書き換えと訳の作成に、1手順あたり20〜40分かかります(初回のみ)。以降は書面を渡して確認する形で10〜15分です(自社での実測が必要です)。
関わる人数教える先輩職員が手順ごとに複数名必要で、言い方も人によって異なります。教育担当1名が書面を整備し、現場での確認は各勤務帯のリーダーが担当します。
起きるミス説明する人によって手順の言い方が変わる、聞き取れなかった箇所を推測で補う、確認を遠慮して不明のまま作業する、といったことが起きます。AIの書き換えで手順の一部が省略される、訳語が現場の言い方と合わない、書面を渡しただけで理解したと見なす、といった誤りが起きます。
必要なスキル日本語を簡単に言い換えながら教える経験と、根気が要ります。安全に関わる箇所を見分けて確認する力と、本人に訳語の通じ方を確かめる姿勢が要ります。

効果の見込み

外国人スタッフへの教育時間について、介護分野で公的機関が公表した削減率の統計は確認できていません。母語の構成、在籍期間、担当する介助の種類によって条件が大きく異なるためです。自社では、同じ介助手順を教えるのに要した時間を、書面整備の前後で記録して比較してください(要実測)。あわせて、同じ質問が繰り返し出る回数を数えると、書面が理解を助けているかを測れます。回数が減らない場合は、書き換えの表現に原因があります。

Steps

実際にやること

読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。

  1. 01

    書き換える手順を、安全への影響で3段階に分ける

    くわしく見る

    すべての手順を同じ扱いにしません。移乗、入浴、食事介助のように、手順を誤ると事故につながるものは「安全に直結」に分類します。記録の付け方や物品の補充のように、誤っても影響が限定されるものは「通常」に分類します。この分類を最初に行い、安全に直結する手順は書き換え後に必ず原文と照合する運用にします。分類しないと、確認の労力がすべての手順に等しく分散し、重要な箇所の確認が薄くなります。

  2. 02

    用語対訳表を作り、確認済みかどうかを保持する

    くわしく見る

    介助の用語、福祉用具の名前、施設内の言い回しを一覧にします。列は「用語ID/日本語/やさしい日本語/母語訳/確認状態/確認者/備考」です。確認状態の列が重要です。AIや翻訳サービスが出した訳は、最初は「初期訳・未確認」の状態から始めます。現場で本人に確認して通じることが分かった時点で「確認済み」に変えます。この状態管理がないと、通じない訳がマニュアル全体に広がります。

  3. 03

    やさしい日本語へ書き換えるプロンプトを作る

    くわしく見る

    書き換えの条件を具体的に指定します。1文の長さ、1文に含める動作の数、使う語彙の水準、ふりがなの付け方を指定しないと、単に語尾を丁寧にしただけの文が返ってきます。書き換え後は必ず原文と並べて出させ、抜けた内容がないかを確認できる形にします。

    プロンプト例

    あなたは介護施設で外国人スタッフ向けの手順書を作成します。以下の【原文の手順書】を、やさしい日本語に書き換えてください。
    
    出力形式:表
    列:手順番号 / 原文(そのまま引用)/ やさしい日本語 / ふりがな付き / この手順で使う用語(用語対訳表に追加すべき語)
    
    書き換えの条件:
    - 1文は30字以内にしてください
    - 1つの文には1つの動作だけを書いてください。2つの動作がある場合は文を分けてください
    - 尊敬語と謙譲語は使わず、丁寧語(です・ます)だけを使ってください
    - 二重否定と受け身を使わないでください
    - 漢字にはふりがな列でルビを示してください(例:移乗(いじょう))
    - 原文にある手順を1つも省略しないでください。省略が必要と判断した場合は、省略せずに「※この手順は分割が必要」と書いてください
    - 原文にない手順を追加しないでください
    - 安全に関わる注意(転倒、誤嚥、皮膚の損傷)は、短くしすぎて意味が変わらないよう特に注意してください
    
    【原文の手順書】
    (貼り付け)
  4. 04

    母語訳を作り、確認前であることを明示する

    くわしく見る

    やさしい日本語の版ができてから、母語訳を作ります。日本語の原文から直接訳すのではなく、やさしい日本語から訳す順序にします。原文から訳すと、日本語として難しい表現がそのまま訳の難しさに移るためです。作った訳には「確認前」と明示し、現場で本人に読んでもらって通じるかを確かめてから「確認済み」にします。訳の品質を職員が判断できない言語では、この現場確認が唯一の検証手段になります。

  5. 05

    安全に直結する手順は、原文と照合して確認する

    くわしく見る

    書き換えた手順のうち、安全に直結すると分類したものは、教育担当が原文と1行ずつ照合します。確認する観点は3つあります。手順が抜けていないか、順番が入れ替わっていないか、そして注意事項の意味が変わっていないかです。特に「〜しないでください」という禁止の表現は、やさしい日本語への書き換えで弱まることがあります。この照合は省略できません。

    プロンプト例

    以下の【原文】と【書き換え後】を1行ずつ照合し、次の観点で差分を報告してください。書き換え後の文章を評価する必要はありません。差分の指摘だけを行ってください。
    
    観点:
    1. 原文にあって書き換え後に無い手順(抜け)
    2. 書き換え後にあって原文に無い手順(追加)
    3. 手順の順番が入れ替わっている箇所
    4. 禁止・注意の表現が弱くなっている箇所(例:「絶対にしないでください」が「しないでください」になっている)
    5. 数値や時間、回数が変わっている箇所
    
    出力列:観点番号 / 原文の該当箇所(引用)/ 書き換え後の該当箇所(引用)/ 差分の内容
    
    差分が無い場合も、観点ごとに「差分なし」の行を出力してください。
    
    【原文】
    (貼り付け)
    
    【書き換え後】
    (貼り付け)
  6. 06

    理解の確認を、書面ではなく実演で行う

    くわしく見る

    マニュアルを渡した後、実際に手順をやってもらって確認します。確認するのは、書いてある手順を再現できるかどうかです。できなかった箇所は、本人の理解不足と決めつけず、まず書き換えた文が分かりにくくないかを疑います。分かりにくい箇所は書き換えを直し、用語対訳表にも反映します。この往復で、マニュアルが現場で使える水準に近づきます。書面の完成をもって教育完了とはしません。

  7. 07

    日々の連絡事項にも同じ形式を使う

    くわしく見る

    マニュアルだけを整備しても、日々の連絡が口頭のままでは伝達の課題は残ります。申し送りや変更の連絡を、やさしい日本語の短い文で書く運用にします。書く手間は増えますが、聞き返せずに推測で動く状況が減ります。連絡文の書き換えもAIに補助させ、用語対訳表を毎回添付することで、マニュアルと同じ言い方を保ちます。

Sample Data

この事例で使うサンプルデータ

実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。

  • Word

    移乗介助手順書_原文.docx

    書き換えの入力となる既存の日本語手順書。安全に直結する注意事項を含みます。

    このファイルをダウンロード

  • CSV

    介護用語_対訳表.csv

    用語ごとのやさしい日本語と母語訳の管理表。訳が現場で確認済みかどうかを状態として持ちます。

    このファイルをダウンロード

  • Word

    移乗介助手順書_やさしい日本語版.docx

    書き換え後の手順書。原文の9手順と1対1で対応し、抜けや追加がないことを確認できる形式です。

    このファイルをダウンロード

一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。

Pitfalls

つまずきやすい点

精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。

翻訳したマニュアルを配って教育完了と見なす
母語に訳した手順書を渡しただけでは、手順が身につきません。訳語が現場の言い方と合っていないこともあります。渡した後に実演で確認し、できなかった箇所は書き方を疑ってください。理解できていないのはスタッフの側だと決めつけると、書き換えの改善が止まります。マニュアルは配布物ではなく、往復して育てるものと考えてください。
やさしい日本語への書き換えで、禁止の強さが弱まる
「決して手を離さないこと」を短くすると「手を はなしません」となり、原文にあった強さが失われます。介助の安全に直結する箇所では、この差が事故につながります。安全に直結すると分類した手順は、必ず原文と照合し、禁止と義務の表現の強さを個別に確認してください。照合はAIに差分を出させ、判断は人が行います。
訳語の妥当性を職員が確認できないまま広げる
日本語話者だけでは、訳語が現場で通じるかを判断できません。辞書上は正しくても、日常で使われない語である場合があります。対訳表に確認状態の列を持たせ、現場のスタッフ本人に確認するまでは未確認のまま扱ってください。未確認の訳が複数のマニュアルへ広がると、後から直す作業が大きくなります。
在留資格や制度の前提を、AIの回答で確認してしまう
特定技能や技能実習に関する要件と手続きは、制度の見直しが進んでいる領域です。技能実習制度については、育成就労制度への移行が予定されています。AIが持っている情報は最新とは限らず、廃止された様式や旧制度の説明が混ざることがあります。在留資格や届出に関する事項は、出入国在留管理庁と厚生労働省の公表資料、および監理団体や登録支援機関へ確認してください。AIに任せるのはマニュアルの書き換えまでです。

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最初の事例である「音声入力による介護記録の下書き作成」に戻ることをおすすめします。やさしい日本語で手順が共有できるようになると、外国人スタッフも音声での記録に参加しやすくなります。用語対訳表と記録の用語辞書は、同じ語を扱うため統合して管理できます。

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