配車計画のたたき台作成と配送順の組み替え
ベテラン配車係の判断基準を条件表に書き出し、翌日の割り当て案をAIに複数出させて比較します。最終決定と法令の確認は運行管理者が行います。

- 対象部署
- 配車部門
- 使う技術
- ChatGPTまたはClaudeによる条件付きの割り当て案の作成 / 制約条件と判断基準のヒアリング(録音と文字起こし) / Googleスプレッドシートでの車両・乗務員マスタ管理 / 拘束時間と連続運転時間の検算プロンプト(別チャットでの二重チェック)
- 必要な入力データ
- 翌日の配送依頼一覧(荷主、届け先、品名、個数、重量、着日、着時間指定、車種指定のCSV) / 車両マスタ(車番、車種、最大積載量、装備、営業所) / 乗務員マスタ(氏名、乗務可能車種、当月の拘束時間の累計、公休予定) / 区間ごとの実績所要時間(過去の運行実績から集めた発地・着地・所要時間の表) / ベテラン配車係の判断基準の聞き取りメモ
Before / After
人がやる場合と、AIを使った場合
効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。
前日の夕方、配車係が翌日の依頼一覧を印刷し、ホワイトボードの車番マグネットを見ながら割り振ります。ドライバーの拘束時間の残り、連続運転の時間、車種と荷姿の相性、荷主の着時間指定、高速代、ドライバーの得意エリアを頭の中で組み合わせます。決まった内容を配車表に書き、ドライバーへ電話やメッセージで伝えます。この作業ができるのは社内で1人か2人で、その方が休むと配車表ができるのが遅くなります。当月の拘束時間の残りは月末の集計を待たないと正確に分からないため、感覚で見積もっています。
依頼一覧と、車両・乗務員の制約条件を表にしてAIへ渡し、割り当て案を3案作らせます。案ごとに拘束時間の余裕、未割当の件数、実車距離の合計を比較した表も出させます。拘束時間と連続運転時間は、別のチャットで検算させて二重に確認します。配車係は、荷主との関係、当日の天候と道路状況、ドライバーの体調や事情など、表に書けない事情を踏まえて最終決定します。法令基準に照らした可否の判断は運行管理者が行い、AIには断定させません。AIの案は検討の出発点であり、そのまま配車指示にはしません。
| 比較する軸 | 人がやる場合 | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 前日の夕方に、依頼一覧の印刷、ホワイトボードでの割り振り、ドライバーへの連絡までを続けて進めます。 | 制約表の更新とAI案の検討、修正に変わります。時間の短縮よりも、複数の案を比べられることが主な変化です。削減幅は要実測です。 |
| 関わる人数 | ベテラン配車係1名に集中し、その方が不在の日は代われる人がいません。 | 条件が表になるため、若手が案を作りベテランが確認する2人体制に移せます。 |
| 起きるミス | 拘束時間の残りの見落とし、着時間指定の重複、空車での回送が起きます。 | AIが制約を取り違えた案を出すことがあります。拘束時間は、人が法令基準に照らして必ず再確認します。 |
| 必要なスキル | 土地勘、荷主ごとの癖、ドライバーの特性を記憶していることが前提です。 | 判断基準を文章と表に書き出す力が中心になります。暗黙知を言葉にする作業が主になります。 |
効果の見込み
要実測。この事例は作業時間の削減より、判断の再現性が主な効果です。測るなら「配車表が完成する時刻」「ベテラン以外が組んだ日の割合」「着時間指定の遅延件数」の3つを、導入前に1か月分記録してください。
Steps
実際にやること
読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。
- 01
ベテランの判断基準を聞き取って書き出す
くわしく見る
配車係に60分ずつ3回、実際の配車表を見ながら「なぜこの車にこの荷を割り当てたのか」を話してもらいます。録音して文字起こしし、出てきた理由を「必ず守る条件」「できれば守る条件」「好みの範囲」の3つに仕分けます。この仕分けが本事例で最も重要な工程です。ここを飛ばすと、AIは的外れな案しか出しません。
- 02
車両・乗務員マスタを表にする
くわしく見る
車番、車種、最大積載量、装備(ゲート、リフト、冷凍)、営業所を一覧にします。乗務員は氏名、乗務可能な車種、当月の拘束時間の累計、公休予定を並べます。拘束時間の累計は前の事例の日報データから引いてくると更新が楽になります。ここが古いままだと案の前提が崩れます。
- 03
翌日の依頼一覧を決まった列で整える
くわしく見る
荷主、届け先、品名、個数、荷姿、重量、着日、着時間指定、車種指定、付帯作業の列で揃えます。前の事例のFAX読み取りで作った受注表をそのまま使えます。あわせて、よく使う区間の実績所要時間の表も用意します。AIは所要時間を勝手に見積もるため、自社の実績値を渡すことが必要です。
- 04
AIに割り当て案を3案作らせる
くわしく見る
守る条件を先に書き、出力の形を指定します。判断できない情報は埋めさせず、質問として出させることが要点です。1案だけ出させるより、3案の比較表を出させたほうが配車係の検討材料になります。以下のプロンプトに書く拘束時間と連続運転の数値は、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)に基づく自社の運用値です。基準は改正されることがあるため、プロンプトに書き写す前に、必ず最新の告示と自社の運行管理規程で数値を確認してください。
プロンプト例
あなたは運送会社の配車担当を補助する立場です。以下の条件で翌日の割り当て案を3案作ってください。 【必ず守る条件】 - 出庫と帰庫は東大阪営業所 - 1日の拘束時間は13時間以内を原則とし、これを超える案は作らない - 連続運転は4時間以内。4時間ごとに合計30分以上の休憩を入れる - 車種と荷姿が合わない組み合わせは不可(パレット荷はウイングまたは平ボディ) - 着時間指定は必ず守る。守れない依頼は割り当てず「未割当」に回す 【できれば守る条件】 - 空車での回送距離を短くする - 同じ荷主の便は同じ乗務員にまとめる 【所要時間の扱い】 - 区間の所要時間は、添付の実績所要時間表の値を使うこと。表にない区間は推測せず、質問として挙げること 【出力】 案ごとに次の表を作ってください。 車番 / 乗務員 / 便順 / 各便の発着予定時刻 / 想定拘束時間 / 未割当となった依頼 そのうえで、3案の違いを「拘束時間の余裕」「未割当件数」「実車距離の合計」で比較した表を付けてください。 判断に必要な情報が足りない場合は、埋めずに質問として列挙してください。 【依頼一覧】(CSVを貼り付け) 【車両・乗務員マスタ】(CSVを貼り付け) 【区間別の実績所要時間】(CSVを貼り付け)
- 05
拘束時間と連続運転を別チャットで検算させる
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案を作ったAIに検算させると、自分の案を正しいと言いがちです。新しいチャットを開き、案だけを貼って計算し直させます。拘束時間は始業時刻から終業時刻までを指すため、出庫前の点呼と日常点検、帰庫後の点呼と報告に要する時間を必ず含めて計算させます。出庫から帰庫までで計算すると、1日あたり30分から60分ほど少なく見積もることになります。可否の断定はさせず、確認が必要な乗務員を挙げさせるだけにします。最終判断は運行管理者が行います。
プロンプト例
次の配車案について、拘束時間と連続運転時間の観点だけを確認してください。 1便ごとの走行時間、荷役時間、待機時間を積み上げ、乗務員ごとに次を計算してください。 - 拘束時間の合計(始業時刻=出庫前点呼の開始から、終業時刻=帰庫後点呼の終了まで。点呼、日常点検、出庫準備、帰庫後の報告に要する時間を含める。出庫時刻から帰庫時刻までで計算しないこと) - 連続運転が4時間を超える区間の有無 - 休憩の合計時間 日付をまたいで帰庫する運行は、終業時刻が始業時刻より小さい値になり、単純な引き算では負の値になります。その場合は日をまたいだ旨を明記したうえで計算してください。 計算の過程を表で示したうえで、最後に「確認が必要な乗務員」だけを列挙してください。 法令に照らした可否の最終判断は当社の運行管理者が行いますので、適合・不適合の断定はしないでください。 計算に必要な情報が不足している場合は、その旨を明記してください。 【配車案】(前の手順で作った案を貼り付け)
- 06
採否の理由を1行だけ残す
くわしく見る
配車係がAI案のどこを直したかを、毎日1行だけ記録します。「A案の3便目を谷から森元に変更。荷主の担当者と面識があるため」といった粒度です。この記録が、次にプロンプトへ足す条件になります。属人化の解消は、この記録の積み上げで進みます。
- 07
月に1回、AI案と実際の配車の差を振り返る
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1か月分の修正記録を並べ、同じ理由で直している箇所を探します。3回以上出た理由は、プロンプトの「必ず守る条件」または「できれば守る条件」に足します。これを3か月続けると、若手が作った案をベテランが確認するだけで済む日が増えていきます。
Sample Data
この事例で使うサンプルデータ
実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。
一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。
Pitfalls
つまずきやすい点
精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。
最初から条件を全部渡すと案が破綻する
AIが所要時間を勝手に見積もる
精度が出ないときは出力の「質問」欄を見る
AI案をそのまま配車指示に出さない
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この事例の入力データは、前の「FAXとメールで届く配送依頼のデータ化」で作った受注表です。配車部門の業務は、受注入力とこの配車計画の2つの事例に分けて書いています。次は「傭車費請求書と運行実績の突合チェック」を読んでください。自社で運びきれない依頼を傭車へ回した結果が、翌月の請求突合につながります。配車の記録が正確であるほど、突合が楽になります。
運送・物流のAI活用レポートをお送りします
この事例を含む5つの活用事例と、サンプルデータをまとめた資料です。社内での共有にお使いいただけます。
