運転日報・ヒヤリハット報告の下書き作成
乗務後の手書き日報とヒヤリハット報告を、音声で話した内容からAIに項目別の下書きへ整理させ、翌朝の判読確認と月末の転記をなくします。

- 対象部署
- 運行管理部門・安全管理担当
- 使う技術
- スマートフォンの音声入力(Gboard等のキーボード音声入力、iPhoneのボイスメモの文字起こし機能) / ChatGPTまたはClaudeによるテキストの項目振り分け / Googleスプレッドシートでの月次集計(SUMIF) / 手書き紙を残す場合は画像からの文字読み取り(ChatGPTの画像入力)
- 必要な入力データ
- 自社の運転日報の様式(項目名の一覧。Excelまたは紙のコピー) / ドライバーが乗務後に話した音声、またはその書き起こしテキスト / 自社の営業所名・荷主名・よく走る地区名をまとめた用語表(20語程度) / ヒヤリハット報告書の様式(記入項目の一覧)
Before / After
人がやる場合と、AIを使った場合
効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。
ドライバーが乗務後に紙の運転日報へ手書きで記入します。出庫時刻、荷積み先と時刻、荷卸し先と時刻、休憩、走行距離、給油量を欄ごとに書きます。ヒヤリハットは別紙に状況と原因と対策を文章で書きますが、疲れた乗務後は「注意する」の一行で終わることが多いです。翌朝、運行管理者が全員分に目を通し、読めない欄はドライバーへ電話で確認します。月末に事務担当がExcelへ転記して乗務員別に集計し、デジタコの記録と時刻が合わない行を1件ずつ照合します。
ドライバーは決められた順番でスマートフォンに話し、その書き起こしをAIが日報の項目に振り分けた下書きを作ります。ヒヤリハットも、話した内容を「発生状況」「要因」「再発防止策の案」の3項目に整理させます。運行管理者は、始業と終業の時刻、休憩の取得、ヒヤリハットの有無の3点を必ず自分の目で確認します。再発防止策を採用するかどうかの判断も人が行います。AIが書いた対策案を社内にそのまま配ることはせず、自社の運行実態に合うかを運行管理者が見てから確定します。デジタコや動態管理システムを導入している場合は、始業と終業の時刻、出庫と帰庫の時刻、走行距離、休憩はデジタコ側の値を正とし、音声入力の対象を荷積み先、荷卸し先、特記事項、ヒヤリハットに絞ります。デジタコとの突合作業はなくなりませんが、照合する相手が手書きの日報からAIの下書きとデジタコの2つに整理されます。
| 比較する軸 | 人がやる場合 | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 手書きの記入、翌朝の判読確認、月末のExcel転記、デジタコ記録との1行ずつの照合という4工程が必要です。 | 音声入力、管理者の確認、デジタコ照合の3工程になります。転記の工程はなくなりますが、デジタコとの照合は残ります。削減幅は要実測です。 |
| 関わる人数 | ドライバー、運行管理者、事務担当の3者が関わります。 | ドライバーと運行管理者の2者で完結し、事務担当の転記作業がなくなります。 |
| 起きるミス | 判読できない文字、記入漏れ、Excelへ転記するときの時刻の打ち間違いが起きます。 | 地名や荷主名の音声認識の誤変換は残ります。管理者が見る3欄と月次の点検で拾います。 |
| 必要なスキル | 日報様式の記入ルールを覚えていることと、Excelでの集計操作が要ります。 | スマートフォンで録音する操作と、AIの下書きの誤りを見抜く読み方が要ります。 |
効果の見込み
要実測。削減幅は日報の枚数、手書きの読みやすさ、乗務員数で大きく変わります。導入前に「翌朝の判読確認にかかった時間」と「月末のExcel転記時間」を2週間分だけ記録し、導入後を同じ方法で測って比較してください。
Steps
実際にやること
読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。
- 01
自社の日報様式を項目リストに書き出す
くわしく見る
運転日報の欄を上から順にGoogleスプレッドシートへ1列1項目で並べます。日付、車番、乗務員名、始業時刻、出庫時刻、帰庫時刻、終業時刻、走行距離、荷積み先と時刻、荷卸し先と時刻、休憩の開始と終了、給油量、特記事項という具合です。始業時刻は出庫前点呼を始めた時刻、終業時刻は帰庫後点呼を終えた時刻を入れます。拘束時間は始業から終業までを指すため、出庫と帰庫の時刻だけでは点呼と日常点検の時間が抜け落ちます。この一覧がAIへの指示の土台になります。他社の様式ではなく、自社が実際に使っている様式で作ってください。
- 02
ドライバーが話す順番を紙1枚にまとめる
くわしく見る
音声入力は自由に話すと項目が抜けます。「日付、車番、始業時刻、出庫時刻、行き先、荷積み時刻、荷卸し時刻、休憩、帰庫時刻、終業時刻、給油、気になったこと」の順で話す紙を作り、運転席のクリップボードに挟みます。まずは3名だけで始めます。 録音した音声をテキストにする手段を先に決めます。iOS 18以降のボイスメモは、録音したあとに文字起こしを表示して本文をコピーできます。それ以外の端末では、Gboardなどキーボードのマイクを押して最初からテキストとして入力するか、ChatGPTアプリの音声入力でそのまま文字にします。パソコンで作業する場合は、Chromeで開いたGoogleドキュメントの音声入力(ツールメニュー内)も使えます。この機能はブラウザ版の機能で、スマートフォンのGoogleドキュメントアプリにはありません。
- 03
音声メモを日報の項目に振り分けるプロンプトを作る
くわしく見る
書き起こしたテキストをAIに貼り付け、手順1で作った項目順のCSVで出させます。ポイントは「書かれていない項目は空欄にし、推測で埋めない」と明示することです。ここを書かないとAIはもっともらしい時刻を作ります。自社の地名表記も一緒に渡します。
プロンプト例
あなたは運送会社の運行管理事務の担当者です。 以下の音声メモを、当社の運転日報の項目に振り分けてCSVで出力してください。 【日報の項目(この順で出力)】 日付, 車番, 乗務員名, 始業時刻, 出庫時刻, 帰庫時刻, 終業時刻, 走行距離km, 荷積み先, 荷積み時刻, 荷卸し先, 荷卸し時刻, 休憩開始, 休憩終了, 給油量L, 特記事項 【ルール】 - 音声メモに書かれていない項目は空欄にし、推測で埋めないこと - 始業時刻は出庫前点呼を始めた時刻、終業時刻は帰庫後点呼を終えた時刻とする。出庫時刻・帰庫時刻で代用しないこと - 時刻は24時間表記(例 08:30)に統一すること - 聞き取りが不確かな箇所は値の後ろに「(要確認)」と付けること - 当社で使う地名表記は次のとおり: 東大阪営業所 / 堺物流センター / 南港倉庫 / 咲洲 / 鶴見 【音声メモ】 (ここに書き起こしテキストを貼り付け)
- 04
ヒヤリハットは別のプロンプトで3項目に整理させる
くわしく見る
日報とヒヤリハットは目的が違うため、プロンプトを分けます。事実と推測を混ぜないこと、個人を責める書き方をしないことを条件に入れます。出てきた再発防止策は案であり、採用の判断は運行管理者が行うという前提で使います。
プロンプト例
次のドライバーの話を、当社のヒヤリハット報告の3項目に整理してください。 1. 発生状況(いつ・どこで・何が起きたか。事実のみ) 2. 要因(本人が話した範囲の理由のみ。話していない理由は「記載なし」とする) 3. 再発防止策の案(3案まで。当社で実行できる範囲に限る) 条件: - 事実と推測を混ぜないこと。推測を書く場合は文頭に「推測:」と付けること - ドライバー個人を責める表現を使わないこと - 各項目は120字以内 【ドライバーの話】 (書き起こしテキストを貼り付け)
- 05
出力をスプレッドシートに貯めて集計する
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AIにはCSV形式で出力させ、Googleスプレッドシートの日報シートへ貼り付けます。列の並びは手順1の項目一覧と同じにします。乗務員別の走行距離はSUMIF関数で出します。拘束時間は1日ごとに終業時刻から始業時刻を引いた列を作り、その列をSUMIFで合計します。日付をまたいで帰庫した日は引き算が負の値になるため、終業時刻に24時間を足して計算する列を別に用意します。Excelへの手転記はここでやめます。月次集計のシートは最初に作っておきます。
- 06
運行管理者が必ず見る欄を3つに絞る
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全項目を毎朝チェックすると、紙の頃と負担が変わりません。法令と安全に直結する「始業と終業の時刻」「休憩の取得」「ヒヤリハットの有無」の3つに絞り、ほかは月次でまとめて点検する運用にします。この3欄は人が見る、と社内文書に明記します。
- 07
2週間試して誤りを記録し、プロンプトを直す
くわしく見る
AIの下書きで間違った箇所を「地名の誤変換」「時刻の取り違え」「空欄の推測埋め」に分類してメモします。多い誤りは、プロンプトの用語表や禁止事項を書き足して直します。3回ほど直すと出力が安定します。直した内容は日付とあわせて残し、担当が代わっても引き継げるようにします。
Sample Data
この事例で使うサンプルデータ
実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。
一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。
Pitfalls
つまずきやすい点
精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。
地名と荷主名が誤変換される
AIが空欄を推測で埋める
再発防止策が一般論で終わる
紙の廃止が目的にすり替わる
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