株式会社プレラナ
難易度 製造業管理・経理転記作業が多い

FAX・メール注文書の受注データ化と内容確認

様式がばらばらな注文書から受注データを読み取り、過去の受注履歴と比べて単価差や桁違いを登録前に洗い出します。

製造業の現場で、FAX・メール注文書の受注データ化と内容確認に取り組んでいる様子
対象部署
営業事務/生産管理部
使う技術
複合機のFAX受信データのPDF転送設定 / 生成AIのPDF・画像読み取り(ChatGPT / Claude) / Power Automate または Google Apps Script(受信メール添付の自動保存) / Googleスプレッドシート(受注履歴との差分比較) / (任意)帳票特化のAI-OCRサービス
必要な入力データ
FAX受信PDF(複合機から指定フォルダへ転送したもの) / メール添付の注文書PDF・Excel / 得意先マスタ(正式名称・略称・表記ゆれを含む) / 自社品番と客先品番の対応表 / 過去6か月の受注履歴(得意先・品番・数量・単価・納期)

Before / After

人がやる場合と、AIを使った場合

効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。

複合機に注文書のFAXが届き、事務担当が紙で受け取ります。得意先ごとに様式が違うため、品番と数量と納期がどこに書かれているかを目で探します。基幹システムの受注入力画面へ手で打ち込みます。客先品番のまま書かれている場合は、対応表を開いて自社品番に読み替えます。単価が前回と違うと、営業担当に確認の電話をします。納期が短い注文は生産管理へ相談し、折り返しを待ちます。打ち間違いに気づくのは、出荷準備の段階か、客先から問い合わせが来たときです。月末は件数が増え、入力だけで残業になります。

人がやる場合とAIを使った場合を、軸ごとに並べた表です。
比較する軸人がやる場合AIを使った場合
所要時間1件ごとに様式を読み解いて手入力します。件数が集中する月末は残業になります。読み取りと履歴比較が一度に済み、人は確認と登録に集中できます。短縮幅は要実測です。
関わる人数事務担当、単価確認のための営業担当、納期確認のための生産管理の3者が都度やり取りします。事務担当が確認事項をまとめてから連絡するため、営業と生産管理への問い合わせ回数が減ります。
起きるミス数量の桁違い、納期の月違い、客先品番の読み替え間違いが起き、出荷準備まで気づきません。読み取り誤りは残ります。ただし前回との差分が指摘されるため、桁違いと単価違いは登録前に見つかります。
必要なスキル得意先ごとの様式を覚えていることと、基幹システムの入力操作が要ります。得意先マスタと品番対応表を最新に保つ運用が要ります。様式の知識はマスタ側へ移していきます。

効果の見込み

要実測です。「注文書1件あたりの入力時間×月間件数」と「入力誤りによる出荷トラブルの月間件数」を、導入前2か月分測ってください。得意先ごとの様式のばらつきが大きいほど、読み取りが安定するまでの手直しが増えます。他社やサービス提供会社が公表している削減例は、様式の統一度や件数の前提が異なります。自社の実測のみを判断材料にしてください。

Steps

実際にやること

読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。

  1. 01

    注文書の入り口を1か所に集める

    くわしく見る

    AIの前に、まず受け口を揃えます。複合機のFAX受信を紙出力と同時にPDFで指定フォルダへ転送する設定にします。メール添付は、Power Automate(Microsoft 365の場合)またはGoogle Apps Script(Gmailの場合)で、特定の差出人ドメインの添付を同じフォルダへ保存します。この工程を飛ばすと、毎回ファイルを探すところから始まり、続きません。フォルダは「未処理」「処理済」の2つに分け、処理後に移動します。

  2. 02

    得意先マスタと品番対応表を整える

    くわしく見る

    得意先マスタには、正式名称に加えて略称と表記ゆれを列に並べます。「(株)」と「株式会社」、支店名の有無、担当者名だけが書かれた注文書など、実際に届いた表記をそのまま登録します。品番対応表は、客先品番・自社品番・品名・単位の4列で作ります。対応がない客先品番は空欄のままにし、埋めないでください。ここを推測で埋めると、誤った品番で受注登録される事故になります。

  3. 03

    注文書から受注データを読み取らせる

    くわしく見る

    注文書PDFと2つのマスタを添付し、明細1行につき1行のCSVで出させます。単価をAIに補わせないことが最重要です。単価表から自動で埋めさせると、価格改定前の単価が混入します。

    プロンプト例

    添付は得意先から届いた注文書です。明細ごとに1行で、次のCSVを出力してください。
    受注日,得意先名,注文番号,客先品番,自社品番,品名,数量,単位,単価,納期,届け先,備考
    
    【ルール】
    ・得意先名は、添付の得意先マスタにある正式名称に揃えてください。一致するものがない場合は、書かれたまま出力し備考に「得意先要確認」と書いてください。
    ・自社品番は、添付の品番対応表からのみ引いてください。対応がない場合は空欄にし、備考に「対応表なし」と書いてください。近い品番を割り当てないでください。
    ・単価が注文書に記載されていない場合は、空欄にしてください。単価表から補わないでください。
    ・納期が「月末」「至急」などの表現の場合は、原文のまま書き、日付に変換しないでください。
    ・数量と単位は注文書に書かれたとおりに写してください。単位が無い場合は空欄にしてください。
    ・読み取れない文字は?にし、その行の備考に「判読不可」と書いてください。
  4. 04

    過去の受注履歴と突き合わせて差分を出させる

    くわしく見る

    読み取り直後に、過去6か月の受注履歴と比較させます。ここで拾えるのは、単価改定の見落とし、数量の桁違い、無理な短納期の3つです。基幹システムへ登録する前にこの3点を潰すのが、この事例の肝です。

    プロンプト例

    今回読み取った受注データと、添付の過去6か月の受注履歴を比較してください。
    
    【確認すること】
    1. 同じ得意先・同じ自社品番で、単価が前回と異なる行。差額と差率も出してください。
    2. 数量が、その品番の過去平均の3倍以上、または3分の1以下の行。
    3. 納期が受注日から5営業日以内の行。
    4. 過去に一度も受注実績がない品番の行。
    
    【出力】
    上の1〜4ごとに、該当する行を「注文番号/品番/今回の値/過去の値/差」の形で並べてください。
    該当がない項目は「該当なし」と書いてください。推測での補足はしないでください。
  5. 05

    確認してから基幹システムへ登録する

    くわしく見る

    AIの出力をそのまま登録しません。事務担当が、要確認の行と差分指摘のあった行を先に処理します。単価差は営業へ、短納期は生産管理へ、まとめて1回で確認します。確認が済んだ行だけを登録対象とし、登録は人が画面で実行します。自動登録まで一気に進めると、誤りが在庫引き当てと出荷指示まで流れてしまいます。まずは登録前チェックの自動化に絞ってください。

  6. 06

    読み取りに失敗した様式を記録し、月次で見直す

    くわしく見る

    うまく読めなかった注文書は、得意先名と失敗した項目を記録します。月末にまとめて見ると、特定の得意先の様式で同じ項目が落ちていることが分かります。その得意先向けの補足指示をプロンプトに1文足すだけで改善する場合がほとんどです。件数の多い上位3社から順に対応し、件数の少ない得意先は手入力のまま残す判断も現実的です。

Sample Data

この事例で使うサンプルデータ

実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。

  • PDF

    260706_注文書_日ノ出物流建設.pdf

    FAX受信を想定した、やや不鮮明な注文書1枚の架空PDFです。客先品番で記載されています。「図面と見積依頼書からの見積下書き作成」の見積依頼書と同じ案件です。

    このファイルをダウンロード

  • Excel

    得意先マスタ_品番対応表.xlsx

    得意先の表記ゆれと、客先品番から自社品番への対応を持つ架空マスタです。

    このファイルをダウンロード

  • Excel

    受注履歴_2026上期.xlsx

    単価差と数量の桁違いを検知するための架空の受注履歴です。

    このファイルをダウンロード

一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。

Pitfalls

つまずきやすい点

精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。

FAXの画質が悪いと数字が崩れる
読み取り誤りが数量と単価に集中するときは、FAXの受信画質を確認してください。標準解像度で受信していると、6と8、3と8が潰れます。複合機側でファイン受信に設定し、PDFの解像度を上げるだけで改善する場合があります。それでも崩れる注文書は、原本を必ず保管し、要確認として人が読む運用にしてください。
得意先ごとに様式が違い、一度に全社は狙えない
全得意先の様式を1つのプロンプトで処理しようとすると、どこかが必ず落ちます。受注件数の多い上位3社に絞り、その3社の様式で安定させてから広げてください。件数の少ない得意先は手入力のまま残す判断も現実的です。効果は件数の多いところに集中しています。
単価をAIに埋めさせると価格改定を跨いで事故になる
単価表を渡すと、AIは空欄の単価を親切に埋めます。価格改定の前後をまたぐと、旧単価で受注登録され、請求段階まで気づけません。単価は「記載がなければ空欄」を徹底し、空欄行は営業へ確認する運用にしてください。この1点だけは例外を作らないことを勧めます。
自動登録まで一気に進めて誤登録が流れる
読み取りが安定してくると、基幹システムへの自動登録まで広げたくなります。ただし誤登録は在庫引き当てと出荷指示まで一気に流れ、止められません。登録は人が画面で実行する形を維持し、AIの役割は登録前のチェックに留めてください。自動化するなら、まず出荷前の照合など、後戻りできる工程から広げます。

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