不具合・トラブル報告書の作成支援と過去事例の検索
現場のメモや口述からトラブル報告書の下書きを作り、過去に同じ現象がなかったかを一覧から検索します。

- 対象部署
- 品質保証部/製造部
- 使う技術
- 生成AI(ChatGPT / Claude)へのメモ・口述内容からの文章化 / 過去トラブル事例のスプレッドシート化(現象・工程・設備・原因・是正の列) / 生成AIによる条件指定での類似事例抽出 / (任意)NotebookLM 等による過去報告書PDFの横断検索
- 必要な入力データ
- 現場担当が残した短いメモ、または口述を書き起こしたテキスト / 過去のトラブル報告書(Word・PDF)と、それを1行1件に整理した一覧 / 報告書の様式(発生日時・発生工程・設備名・対象製品と工番・現象・影響範囲・応急処置・推定原因・再発防止・水平展開) / 工程名と設備名の一覧(表記を揃えるため)
Before / After
人がやる場合と、AIを使った場合
効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。
不具合が出ると、現場担当が発生時刻と現象を手元のメモに書きます。夕方に事務所へ戻ってから、Wordの様式へ清書します。原因欄と是正欄の書き方が分からず、過去の報告書フォルダを開いて似た事例を探します。ファイル名は日付と製品名だけなので、現象では探せません。結局ベテランに「前に同じのなかったですか」と聞き、記憶を頼りに探します。報告書の粒度が人によって違い、現象欄に原因の推測が書かれていたり、是正欄が空欄のまま提出されたりします。後から集計しても傾向が読めません。
現場担当が、発生状況を話した内容または短いメモをAIに渡します。AIが様式の項目ごとに文章を組み立て、埋まらなかった項目を「未記入」と示し、現場に確認すべきことを箇条書きで返します。次に過去トラブル事例の一覧を渡し、現象と工程が近い事例を挙げさせます。人が判断するのは、真因が何かの特定です。是正措置を採るかどうか、水平展開をどの工程まで広げるかも人が決めます。原因の断定はAIに書かせず、可能性として複数並べさせるにとどめます。
| 比較する軸 | 人がやる場合 | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 所要時間 | メモの清書と過去事例探しに、当日の残業時間が使われます。報告書の提出は翌日以降になりがちです。 | 下書きと類似事例が同時に出るため、提出を当日中に前倒しできます。短縮幅は要実測です。 |
| 関わる人数 | 現場担当、記憶を頼られるベテラン、品質保証の3者が関わります。ベテランが検索窓の役割を担います。 | 現場担当が下書きまで作り、品質保証が確認します。ベテランは真因の議論に時間を使えます。 |
| 起きるミス | 項目の書き漏れ、現象と原因の混同、3年前に同じ不具合があったことに気づかないことが起きます。 | AIがもっともらしい原因を書く危険があります。候補を3つまで並べさせ断定させないことで抑えます。 |
| 必要なスキル | 様式の記入経験と、過去事例を記憶しているベテランの経験に依存します。 | 事実と推測を分けて話す力が要ります。過去事例を検索できる表として蓄積し続ける運用も必要です。 |
効果の見込み
要実測です。「報告書1件の作成時間」と「過去事例を探すのに要した時間」を、まず10件分だけ記録してください。あわせて、同じ現象分類のトラブルが再発した件数も月次で数えます。他社が公表している削減率は、専用に開発されたシステムの値であることが多く、表計算と汎用AIで始める本事例とは規模も前提も異なります。自社の実測のみを判断材料にしてください。
Steps
実際にやること
読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。
- 01
過去の報告書を1行1件の表に落とす
くわしく見る
直近3年分の報告書から、発生日・工程・設備名・製品・現象(短い言葉)・現象分類・推定原因・是正内容・再発の有無・再発時の状況を抜き出し、1件1行の表にします。再発時の状況の列は、再発ありの行だけに記入し、それ以外は空欄のままにします。この列がないと、あとから「なぜ再発したか」をAIに聞いたときに、記録のない理由を書かせてしまいます。現象分類は最初に10種類程度を決めます。例えば「寸法不良」「溶接欠陥」「表面キズ」「部材違い」「工程飛ばし」などです。この分類列がないと、言葉の違う同じ不具合を拾えません。件数が多い場合は、まず不具合の多い1工程分から始めます。
- 02
メモをそのまま渡して下書きさせる
くわしく見る
現場のメモは短く、主語が抜けています。それをそのまま渡して構いません。重要なのは、書かれていない事実を補わせないことです。「メモにない事実を補わないでください」「不明な項目は未記入と書いてください」の2文を必ず入れます。
プロンプト例
あなたは製造現場のトラブル報告書の作成を手伝います。 次のメモをもとに、下記の様式の各項目を埋めてください。 【様式】 発生日時/発生工程/設備名/対象製品・工番/現象/影響範囲/応急処置/推定原因(候補を3つまで)/再発防止の案/水平展開の候補 【ルール】 ・メモに書かれていない事実を補わないでください。不明な項目は「未記入」と書いてください。 ・現象の欄には、見えた事実だけを書いてください。原因の推測を混ぜないでください。 ・推定原因は断定せず、「〜の可能性」という形で3つまで並べてください。1つに絞らないでください。 ・最後に「報告書を完成させるために現場へ確認すべきこと」を箇条書きで挙げてください。 【メモ】 (ここに現場のメモ、または口述の書き起こしを貼り付け)
- 03
確認事項を現場に戻して埋める
くわしく見る
AIが挙げた確認事項を持って、その日のうちに現場へ戻ります。ここが報告書の質を決める工程です。時間が経つほど、材料ロットや設定値といった事実が失われます。確認して埋めた項目は、AIの出力ではなく人が書いた記述として扱い、報告書上で区別できるようにしておくと後の検証が楽になります。
- 04
過去事例から類似を検索させる
くわしく見る
現象の文言が違っても内容が近ければ拾わせる、ただし該当がなければ「該当なし」と答えさせる、の2点を指定します。無関係な事例を並べられると、確認の手間が増えて使われなくなります。
プロンプト例
添付の過去トラブル一覧から、次の条件に近い事例を挙げてください。 【今回の条件】 発生工程:溶接/設備:半自動溶接機3号/現象:ビード表面にピットが多発/対象:SS400 t9 隅肉溶接 【出力】 各事例について次の順で1行ずつ書いてください。 発生日,工程,設備,現象,推定原因,是正内容,再発の有無,再発時の状況,今回との共通点 【ルール】 ・現象の文言が違っても、内容が近ければ拾ってください。 ・条件に近い事例がない場合は「該当なし」とだけ答えてください。無関係な事例を並べないでください。 ・再発ありの事例は、一覧のP列(再発時の状況)に書かれている内容をそのまま引用してください。P列が空欄の場合は「再発理由の記録なし」と書いてください。理由を推測して書かないでください。
- 05
原因欄の書き方をルールにする
くわしく見る
報告書の様式そのものを直します。現象欄と推定原因欄を明確に分け、推定原因欄には「〜の可能性」と書く決まりにします。さらに、真因が特定できた時点で「確定原因」欄へ書き移す運用にします。AIの下書きは推定原因欄までしか埋めない、というルールを品質保証部で明文化してください。これで、AIが書いた推測が確定原因として一人歩きするのを防げます。
- 06
表への追記当番を決め、月次で見直す
くわしく見る
報告書が完成したら、その内容を1行にして事例一覧へ追記します。追記が止まると、翌年から検索が機能しなくなります。品質保証部で月次の追記当番を決め、月初に前月分をまとめて反映してください。あわせて、現象分類が実態に合っているかを半年に1回見直します。分類に入らない事例が増えていたら、分類を足す時期です。
Sample Data
この事例で使うサンプルデータ
実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。
一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。
Pitfalls
つまずきやすい点
精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。
AIがもっともらしい原因を断定する
過去事例が文書のままだと検索できない
現象欄に推測が混ざったまま蓄積される
表への追記が止まって使われなくなる
Related
製造業の他の事例
次に読むなら「FAX・メール注文書の受注データ化と内容確認」です。トラブル一覧で身についた「表に蓄積して照合する」型を、受注履歴との差分チェックにそのまま応用します。過去の値と今回の値を並べて差を出すという考え方は、現象の検索でも単価の検算でも同じです。
製造業のAI活用レポートをお送りします
この事例を含む5つの活用事例と、サンプルデータをまとめた資料です。社内での共有にお使いいただけます。
