現場の呼び名を品番へ変換する資材手配依頼書のデータ化
主役は読み取りではなく、「9ミリの黒皮」のような現場の呼び名を品番へ結びつける別名マスタの整備です。読み取った依頼書を品番に変換し、在庫表の差引在庫と突き合わせます。

- 対象部署
- 生産管理部 資材課/製造部
- 使う技術
- 生成AIの画像読み取り(手書き依頼書の撮影データ) / 品番マスタへの別名列の追加(現場での呼び名を登録) / 生成AIによる2表の突合(依頼一覧と在庫表) / Googleスプレッドシート(XLOOKUPと差引在庫の算出)
- 必要な入力データ
- 手書き資材手配依頼書の写真(1回8枚程度まで) / 現在庫表(品番・品名・材質・寸法・在庫数・引当済数・入庫予定日・保管場所) / 品番マスタ(品番・正式品名・現場での呼び名を並べた別名列) / 発注点と標準発注ロットの一覧
Before / After
人がやる場合と、AIを使った場合
効果だけを並べても判断できません。まず「今どうやっているか」を具体的に書きます。タブを切り替えて読み比べてください。
現場担当が手書きの資材手配依頼書に品名と数量と希望納期を書き、資材課の箱に入れます。資材課が1枚ずつ読み、在庫表をスクロールして該当の品番を探します。現場は「9ミリの黒皮」「6角の細いやつ」のような呼び名で書くため、品番への読み替えを担当者の記憶で行います。在庫があると判断して手配を止めたところ、実は他工事で引き当て済みだった、という取り違えが起きます。不足分は発注書を起こし、依頼書に手書きで「発注済」と書き戻します。担当者が休むと、呼び名が分からず手配が止まります。
依頼書をまとめて撮影し、AIに品名・数量・単位・希望納期・工番を読み取らせます。品名は書かれた表記のまま出力させ、この段階では品番に直しません。次に品番マスタの別名列と照合し、確定・別名一致・要確認の3つに仕分けます。確定した行だけを在庫表と突き合わせ、差引在庫(在庫数から引当済数を引いた数)と比べて在庫充当・不足を判定します。人が判断するのは、要確認になった呼び名が何を指すかの特定です。他工事との引き当て優先順位、発注をまとめるか分けるかも人が決めます。発注の実行は資材課の承認後に行います。
| 比較する軸 | 人がやる場合 | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 依頼書1枚ごとに在庫表を検索するため、枚数にそのまま比例します。品番が分からない依頼で作業が止まります。 | まとめて読み取り、突合は一度に処理できます。人は要確認の行だけを見ます。短縮幅は要実測です。 |
| 関わる人数 | 現場担当、資材課、品番が分からないときに聞かれる先輩の3者が関わります。 | 現場担当と資材課の2者です。呼び名の読み替えは別名列に蓄積され、聞く回数が減ります。 |
| 起きるミス | 呼び名から品番への読み替え間違い、引き当て済み在庫の二重計上、依頼書1枚の見落としが起きます。 | 読み取り誤りは残ります。ただし一致しない品名が必ず要確認として残るため、勘で品番を当てる場面が減ります。 |
| 必要なスキル | 品番と現場の呼び名の対応を覚えている経験が要ります。担当が休むと代替が利きません。 | 別名列を育てる運用と、突合結果の確認が要ります。経験を表へ移す作業そのものが仕事になります。 |
効果の見込み
要実測です。「依頼書1枚あたりの品番特定にかかる時間×月間枚数」と、「二重手配・欠品による手配やり直しの月間件数」を導入前2か月分測ってください。後者は時間だけでは見えない効果で、資材課の手戻りとして記録すると比較できます。なお在庫表に引当済数の列がない状態では効果が出ないため、先に列を整えたうえで測定を始めてください。
Steps
実際にやること
読んだ方がそのまま試せる粒度で書いています。出し惜しみはしません。各手順の説明とプロンプト例は「くわしく見る」を開くと読めます。
- 01
品番マスタに「現場での呼び名」列を足す
くわしく見る
最初にやるのはAIの設定ではなく、マスタの整備です。品番マスタに別名列を作り、資材課の担当者が知っている呼び名を思い出せるだけ書き出します。1品番に複数の呼び名があるので、セミコロン区切りで並べます。例えば「9ミリの黒皮」「黒皮9」「t9黒」を1つのセルに入れます。この列がない状態で始めると、要確認が大量に出て運用が止まります。
- 02
在庫表に引当済数の列を用意する
くわしく見る
在庫数だけの表では、二重手配は防げません。在庫数と引当済数を分け、差引在庫を数式で出す形にします。引当済数は工番ごとの引き当て一覧から集計します。既存の生産管理システムから出力できるなら、その値を貼り付けるだけで構いません。ここが整っていないと、AIを入れても判定が信用できません。
- 03
依頼書を撮影して読み取らせる
くわしく見る
依頼書をまとめて撮影し、品名は書かれたまま出力させます。品番への変換をこの段階でさせないことが精度の要です。変換を同時にさせると、読み取り誤りと読み替え誤りが混ざって原因が追えなくなります。
プロンプト例
添付は手書きの資材手配依頼書です。1枚につき1行で、次のCSVにしてください。 依頼日,依頼者,工番,品名(記載のまま),数量,単位,希望納期,備考 【ルール】 ・品名は書かれている表記をそのまま書き写してください。正式な品番や品名に直さないでください。 ・数量の単位(枚・本・m・kg・個)が書かれていない場合は、単位を空欄にしてください。補わないでください。 ・読み取れない文字は?にし、その行の備考に「判読不可」と書いてください。 ・添付した画像は全部で8枚です。8行出力してください。行数が合わない場合は、出力の前に報告してください。
- 04
別名列と照合して品番を特定させる
くわしく見る
読み取った一覧と品番マスタを渡し、判定を3段階で出させます。要確認の行に近そうな品番を割り当てさせないことが重要です。「近い品番を勝手に割り当てないでください」と明記してください。
プロンプト例
添付の【品番マスタ(別名列つき)】と【読み取った依頼一覧】を突き合わせ、品番を特定してください。 【判定ルール】 ・正式品名と完全一致 → 判定「確定」 ・別名列のいずれかと一致 → 判定「別名一致」 ・どちらにも当たらない → 判定「要確認」 ・要確認の行に、近そうな品番を勝手に割り当てないでください。品番欄は空欄のままにしてください。 【出力】 工番,品名(記載のまま),品番,判定,数量,単位 最後に、要確認となった品名を一覧で並べ、それぞれについて「マスタのどの品番の可能性があるか」を候補として挙げてください。候補は割り当てではなく、あくまで確認用として最大3件までとしてください。
- 05
在庫表と突き合わせて充当可否を出す
くわしく見る
確定と別名一致の行だけを在庫表と突き合わせます。差引在庫が数量以上なら在庫充当、不足なら不足数を出します。この計算はAIではなくスプレッドシートのXLOOKUPと引き算で行う方が確実です。AIに計算させる場合は、必ず在庫数・引当済数・差引在庫の3つを出力させ、人が検算できる形にしてください。不足行には発注点と標準ロットを付けて、発注数の検討材料にします。
- 06
要確認を現場に返す運用と、別名列の更新当番を決める
くわしく見る
要確認の一覧は、その日のうちに現場へ返します。現場が「これは黒皮9のことです」と答えたら、その呼び名を別名列へ追記します。追記の当番を資材課で決め、週1回まとめて反映します。この更新が止まると要確認が増え続け、やがて使われなくなります。弊社の導入支援では、追記が止まった現場が半年ほどで運用をやめてしまう例が多く見られます。運用開始から2か月間は、要確認の件数を週次で記録してください。件数が減っていれば別名列が育っています。
Sample Data
この事例で使うサンプルデータ
実際に手を動かして試せるよう、サンプルを用意しています。すべて架空のデータです。お客様の実データは一切使用していません。
手書き書類の画像
260702_資材手配依頼書_鋼材.png
現場が手書きした資材手配依頼書を模した架空データの画像です。確定・別名一致・要確認の3判定がすべて出るように内訳を組んでいます。
一式をまとめた形は、業界別レポートに同梱してお渡ししています。
Pitfalls
つまずきやすい点
精度が出ないときにどこを見るか。ここが分かるかどうかで、定着するかが決まります。見出しを開くと、確かめる箇所が読めます。
別名列がないと要確認が大量に出る
引当済数がない在庫表では判定が信用できない
単位が空欄のまま数量だけが残る
画像の枚数と出力行数が合わない
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